2011年02月01日

はじめてのクラシック 2009年 レポート・前半

「 はじめてのクラシック 2009年 
  ~ 中学生・高校生のために ~ 」
公演日 : 2009年8月11日(火)・12日(水)
     二へドンが鑑賞したのは、08月12日(水)の方です。
開 場 : 13:00~
開 演 : 14:00~
会 場 : 東京国際フォーラム・ホールA
     〒100-0005 東京都千代田区丸の内3丁目5番1号
     TEL:03-5221-9000 
出演者 指 揮 :小林研一郎
ヴァイオリン : 瀬崎明日香
ピアノ : 金子三勇士
管弦楽 : 新日本フィルハーモニー交響楽団
案内役 : 三枝成彰

曲目(予定) チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op.35 
                ピアノ協奏曲 第1番 変ロ短調 op.23
                交響曲 第4番 へ短調 op.36

*******************************

14:00に三枝成彰( さえぐさ しげあき )さんがステージに姿を現しました。
「 こんにちは。 『 はじめてのクラシック ~ 中学生・高校生のために 』
  今年で3年目になります。
  とにかくクラシック音楽を聴いて頂いて、好きになってもらうと言うのが
  大きな目的になっております。
  驚くのは1,000円と云う価格です。
  でも内容は1万円以上の価値が有ります。
  スポンサー4社のお陰で、こういう事が出来るのです。
  今日はチャイコフスキーの曲ばかりを聞いて頂きます。
  しかも、ヴァイオリン・コンチェルト、ピアノ・コンチェルト、交響曲と
  3種類を聞いて頂きます。

  日本の方は音楽は慰めだと思っています。
  でもヨーロッパの人々は音楽は慰めだとは思っていません。
  メッセージを伝える道具だと思っています。

  ベートーヴェンの第九は、王様と乞食は平等だと言うメッセージを伝えて
  いるんです。
  マドンナは十字架を背負って、アラブのミュージシャンと一緒に歌っていました。
  でも日本の方は、それがどういう事か分からなかったんです。
  悪魔の音楽と云う言葉が有ります。
  人々の官能をくすぐる音楽ですね。
  ポップス音楽とか、そういうのを指しているのかもしれません。

  ドイツ人の哲学者カントが、音楽はあらゆる芸術の分野で最低だと言っております。
  音楽を聴いて心が揺れ動くと言うなんて、非科学的だ。
  文学や哲学等、100年後の人間に財産として残る物が芸術であると言っています。

  さて、今日お届けするチャイコフスキーの音楽を嫌いな民族がいます。
  ドイツ人とフランス人です。
  『 美しくて甘過ぎる 』『 お菓子の様だ』『 身体の栄養にならない 』
  バッハ、モーツァルト、ベートーヴェン、ハイドンは皆ドイツ人です。
  不思議な事にクラシック音楽はドイツ人が作ったんです。
  チャイコフスキーにはメッセージが無い。
  でも日本人はチャイコフスキーが大好きです。
  チャイコフスキーが駄目な理由は、美し過ぎて罪悪だと言う事だったんです。
  西洋人に取って温泉は病気を治す所。
  日本人は温泉に入ったら酒を飲んで、出来たら綺麗なお嬢さんもいて、
  楽しくやりたい。
  キリスト教徒は『 原罪 』の考え方が有る。 楽しいだけの音楽は罪悪。
  チャイコフスキーやラフマニノフは、どうも罪悪の音楽と見做される。
  中村弘子がチャイコフスキーの演奏会をドイツでやった時に、
  中村弘子が『 今度はラフマニノフを弾きたいですね。』と言ったら
  指揮者がびっくりしたそうです。
  日本はメッセージに拘らない。 
  でも向こうは思想が入らないと音楽では無いと思うみたいですね。」

ふふ。三枝節は今年も健在です。
この後、三枝氏は、槙原敬之( まきはら のりゆき )の
「 世界に一つだけの花 」の歌詞を朗読しました。
歌詞はここには載せません。松本零士さんに訴えられたら困るもん。
って、あ!「 世界に一つだけの花 」は、「銀河鉄道999」 は全然関係無かった
ですね。 はははは。
では、三枝成彰節の続きです。

「 男の子が男の子を好きになってもいいんだよと云うメッセージが隠されている。
  でも皆さん、気がついてないんですけど。
  野球の入場の時にブラバンが演奏して歩いているのを見て、
  『 んー、皮肉だな。』と思うんですけど。

  今日は3つのチャイコフスキーを聴いて頂いて、
  自分はチャイコフスキーを好きかどうか考えて頂きたい。
  もし好きなら、どうしてなんだろうかと考えて下さい。
  それが今日の課題です。
  何れも素晴らしい曲です。では、オーケストラの方、どうぞ!」

オーケストラの人々の入場です。(笑)
「 世界に一つだけの花 」は流れてないから大丈夫。(笑)
新日本フィルって、夏服を着たりすると思ったけど、
( 二へドンが贔屓にしている神奈川フィルは年中真っ黒け。)
今日は皆さん、黒一色でした。

14:13 オーケストラの全員がステージに姿を現し、音だしを始めました。
ヴァイオリンの瀬崎明日香ちゃんも入場です。
ピーチ色のプリンセス・ドレスです。
外側のシフォン地の布地の向こう側が透けて見えます。
指揮者のコバケンも登場です。
( 「 こばけん 」で入力して変換キーを押したら「 小馬券 」と出たよ。)

1曲目はチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op.35。
第1楽章 オーケストラの薄絹の帳の様な音に二へドンの脳味噌は「 はい~? 」。
     そして瀬崎明日香ちゃんのヴァイオリンの音色に再び「 はい~???」。
     何だ? 何だ? 明日香ちゃんの哲学的な演奏は!?
     明日香ちゃんはまだ若いお嬢さんだから、音もまだ軽いのだろうと
     勝手に思い込んでいたのです。
     若いから音が軽くていいんじゃないんだ。
     二へドンは彼女を「 芸術家 」として認定します。
     明日香ちゃんのヴァイオリニストとしての存在感にコバケンも霞んだ!?

瀬崎明日香ちゃんの演奏の深さはピカイチ。
彼女のテクニックや芸術性は申し分無いので、1つだけ注文を付けさせて下さい。
明日香ちゃんは、演奏中、彼女の心が自分に向かっちゃっているので、
もうちょっと聴衆の方に心を向けられると良いなあ、と思いました。
演奏する側と客席が心を合わせられた時、双方が感じる充実感って
凄い至福のひと時なんだよねー。
明日香ちゃんは、これからステージと云う場数を踏んで、
客席と1つになると言う感動体験を一杯して欲しいなあ。

明日香ちゃんが背中を後ろに反らす仕草が、イナバウアーちっくで可愛かった。
背中がしなやかな若さに溢れているから魅惑的なんだよね。
これが肉襦袢を着たおばさんが演ると、・・・・・・むむむむ。

しかし「 炎のコバケン 」にしては、この第1楽章は静かでクール仕様の
コバケンなのでありました。
こんな涼しい感じのコバケンは初めて聴いた様な気がします。
「 炎 」の先入観を持ち過ぎですかね?
拍手~!!

第2楽章 メロウな第2楽章も明日香ちゃんの圧倒的な音の存在感がばっちり。
     もう言っちゃっていいですか?「 神降臨 」。
     ここまで言い切っちゃっても良い位の鮮烈な演奏でしたよ。
     しかも、合間に聞こえるフルートのトリルの音心がゾクゾク。
     中盤のヴァイオリン・ソロでは、固唾を呑んで聴き入ってしまいました。

     明日香ちゃんはきっと、日常生活ではフツーの可愛らしいお嬢さんなんだ
     ろうけれど、ヴァイオリンを持ってステージの上に立つと、
     俄然カリスマ性を帯びて来るタイプ。
改めて三枝成彰さんが語った「 チャイコフスキーにはメッセージが無い 」
と云う事を考えてみました。
それって、ドイツやフランスの人達が、「 メッセージが無い 」と云うメッセージを
理解出来て無いって事なんじゃないだろうか?
禅の「 無 」を理解出来ないのだろうか。
「 無 」と言う存在は確かに有るのに。
数字のゼロを発見したのはインド人だと言うのも頷ける気がします。
東洋人は大昔から「 無 」の存在を好意的に捉えていたのではないだろうか?
宇宙の虚無は、ヨーロッパでは有ってはならないものなのだろうか?
チャイコフスキーを否定すると云う考え方は、歪化された林檎の木だと思うのです。
つまり、スタートは自然だったのに、段々不自然にさせられて行く考え方。
不自然であるって事は、自然を作った神に逆らう事になるって思わないのだろうか?
ドイツ人の哲学者カントが、音楽はあらゆる芸術の分野で最低だと言ったのも、
もしその音楽が「 バッハ以後の楽典に縛られた音楽 」を指すのであれば、
あながち間違ってもいない訳ですよ。
チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲二長調 op.35を聴きながら、こんな事を
考えてしまいました。

結論 : 二へドンはチャイコフスキーが好きだ!!
     ( ドイツ音楽のアンチテーゼとして、チャイコの存在は重要だよね。)

瀬崎明日香ちゃんはロングのストレートヘアーをなびかせて客席に向かって
深くおじぎをしました。
そしてコンマスの中江王子と握手をします。
中江王子も立ち上がって応えます。
明日香ちゃんは2回のカーテンコールの後、本日のお仕事は終了です。
いやはや、いいものを聴かせて頂きました。ありがとうございました。

三枝成彰 「 瀬崎さんのヴァイオリン、凄かったですねー。
圧倒されました。
今日は瀬崎さんに好きな様に演奏して頂いて、それに小林研一郎さん
      に合わせて頂きました。
    第1楽章の後に拍手して頂いていいんですよ。
    150年前に楽章毎に拍手をするかどうか、凄く揉めたんです。
    昔は音楽家は貴族に雇われていたので、従業員に拍手をする
      必要が無いってね。
    拍手をする時に立ち上がるのも、1つの心の表し方です。
      日本人は酒に酔う事に寛容です。
      ロシア人もそうですね。
      昔、エリツィンと云う大統領がいて、いつも酔っていたみたいで、
      それが可愛らしいと思われていた。
      酒に酔い、花に酔い、恋に酔う。
      ドイツ人やフランス人は酔う事は恥ずかしい事だと思う様です。
      チャイコフスキーは、我々に取って大変素晴らしい作曲家なのに、
      酔うと言う事は恥ずかしいと考える人もいる。

      次のピアノは金子君。 
      金子君は今19歳。昨年は19歳の辻井君に出演して頂きました。
      音楽に溺れると言う事は大変に素晴らしいと言う考え方をする人もいます。
      それではチャイコフスキーのピアノ協奏曲を聴いて頂きましょう。」

15:00 ピアノの開けてある蓋のてっぺんに金子君の頭の先が届きそう!な位に背
の高い金子君が登場です。

第1楽章
へー。ちょっとビックリしました。
金子君って、長身だから、きっとピアノも力強く弾くんだろうな、なんて先入観
を持ってしまっていたのですが、その長身から想像するのと比べると、ちょっと
力が無いかなあと思っちゃいました。
ニヘドン的には、この曲の前半は、「 そこは叩き過ぎだろう」と言う位に弾いて
もらっても全然 OKなんですけどね。

金子君は正確無比で、安っぽい情緒に流されない演奏をするピアニストです。
音符と音符の間の空間に音を作り上げるピアニスト。
金子君のピアノの音とオーケストラの音の融合は、聴衆を、い~い気持ちにさせ
てくれます。
突然、ニヘドンの脳裏に、こんがり焼いた厚切りトーストが現れました。
(・ω・;)
湯気が立ち上る厚切りトーストの上にバターがトロ~リと溶けて、パンにたっぷ
り染み込んだみたいな美味しさ。
そう、金子三勇士君のピアノの音は、
「 たっぷり 」「 とろ~り 」「 ほかほか 」「 さっくり 」…
こんな言葉を連想させる、温かい幸せな家庭の朝食のテーブルの雰囲気に満ちた
第1楽章でした。

第2楽章
ヴァイオリンのピツィカートが柔らかく水の泡( あぶく )を弾かせるみたい。
すると金子君のピアノが、清烈な小川の流れを立てて来るのです。
山に行った時に小川を見つけ、無防備に手を突っ込んだら余りにも水が冷たくて
、慌てて手を引っ込めてしまう。
そんな目の覚める様なピアノの音色にミントの香りを嗅いだ様な気がします。

後半のピアノとオーケストラの掛け合いの部分は、ガーシュウィンの曲に似通っ
た物も感じるんだなぁ。

クライマックスは金子君の両手が鍵盤の上でパワーを炸裂させます!!
やったぁ~! o(^o^)o
聴いている心地は気分爽快!!

客席から、大歓声が沸き起こりました。
金子三勇士君は退場した後、再度カーテンコールに出て来て、
コバケンと手を繋いで、その手を上に上げて、お客の歓声に応えます。

15:38 15分間の休憩に入ります。
この後の第2部の様子は、別の記事にup します。

***** 「 はじめてのクラシック 2009年 レポート・前半 」 ・ 完 *****




      


   





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Posted by ニヘドン at 02:01│Comments(0)コンサート
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