2011年10月26日

「 ブンミおじさんの森 」 前半

鑑賞日 : 2011年09月18日(日)
映画館 : ブリリア・ショートショート・シアター

嬉しいですね。
ブリリア・ショートショート・シアターは、
名前の通りショート・フィルム専門の上映館ですが、
たまに長編映画も上映してくれます。
たまに上映するんですから、
わざわざ駄作を持って来る訳が無い!
と言う訳で、今回の作品は「 ブンミおじさんの森 」。
クー。 嬉しいねえ。
この、タイ制作の、映画好きの間では話題の映画を、
わざわざ東京迄交通費を使わずに
横浜で観る事が出来るのですから。
ブリリアさん、ありがとう!!

この映画を観て、ニヘドンは衝撃を受けました。
最初に、この映画上映のチラシを見た時に、
可愛らしくメルヘンタッチのイラストが描かれていたのです。
そこへ持って来て邦題が「 ブンミおじさんの森 」でしょう?
何か、「 ♪ ある〜ひ〜、もりのなっか〜、くまさんに〜、であったぁ〜 ♪ 」みたいな
勝手な先入観を持って観てしまったのでした。

そうしたら、ブンミおじさんの亡くなった妻が実体を伴って現れるオカルト映画であったし、
中盤に挟まれるエピソードは、
容色が衰えた事を嘆く王妃の、何ともまあ「 えろえろ 」なタイ活ろまんぽるの!? であった訳です。

ニヘドンの伯父夫婦&祖母が10年以上バンコクに住んでいたので、ニヘドンも度々伯父夫婦の家に泊めてもらい、
ツアーの観光客よりはバンコクの事情に詳しいなんて思っていましたが、
しかし、タイはミステリーなカオス・ワールド。
100や200の事が分かったって、全体像はまるで掴めません。
大体、あれだけの仏教国で、少年僧から中年僧から老僧まで、街中至る所に僧服で修行中の老若男女が闊歩しているのに、
何であんなにスリ、置き引き、かっぱら、強請、タカリ、詐欺、強盗、交通事故等、人を大切に思わない行為が蔓延っているのでしょうか?
ガイドブックでタイの不思議な習慣を読みました。
それに拠ると、タイでは小さな子供連れには電車やバスの中で必ず席を譲ってあげるのだそうです。
その代わり妊婦には人権は無いらしく、妊婦を立たせて、子連れを座らせると。
話し半分でニヘドンが当時1歳の息子ちゃんを連れてバンコクの路線バスに乗りましたら、ガイドブックに書いてあった通り、車中の全ての人々が、私に座れ座れの大合唱。
そして、それだけはして欲しくなかったのですが、事も有ろうに妊婦さんが立って席を譲ってくれたのでした。
この感覚の違いは妊婦を座らせて当然の日本で生まれ育ったニヘドンには、
永遠のミステリーだと思うのです。

こんなミステリーなタイで作られた
映画「 ブンミおじさんの森 」は、今まで考えた事の無かった不思議な感覚を覚えます。
まるで脳ミソがメビウスの輪の様に捻れてしまった様です。

日本で幽霊が出て来たら、それは、この世に怨みを残して、
それを晴らしに来たか、
或いは大切な子供を世話する為か、でしょう。
戻って来るそれなりの理由が有り、
その情の深さに日本人は皆、涙を流すか、恐怖を感じるかするのですよね。

ブンミおじさんの妻は、全然違うの。
青白い顔もしていなければ、
ゾンビの様に腐った死体でもない。
普通の生身の人間としで「 こんにちは。」「 あ、久しぶり。」「 元気してた?」「 うん、まあね。」みたいな感じ。
他の人々にも、ちゃんと見えてるし、ちゃんと喋れる。
超常現象の恐怖感はまるで無し。

実は、バンコクで伯母が亡くなった時に、ニヘドンは葬儀に行かれず、翌年、ニヘドンの母親と一緒に、葬儀が行われた寺院に行ってみました。
其処に、膝丈の木綿のプリントドレスを、
ちょっとだらしなく着た中年女性が座っていました。
真っ黒なセミロングの髪は、1度かけたパーマがとれてしまったみたい。
何とも冴えない、何処にでも居る中年のオバチャンです。
ただ、アイメイクだけは気張ってしてました。
母親が言いました。「 目を合わせちゃいけないっ!!
あれは魔女だ。伯母さんの葬儀に来ていた魔女だっ!! 」
そして母親だけ1人で、ブーンと顔を背けたのです。
ニヘドンは母親の言葉の意味を把握しようと思った途端、
バッチリ魔女さんと視線を合わせてしまったのでした。
ビビりました。
しかしもう目を合わせてしまったのですから仕方が有りません。

「 ブンミおじさんの森 」を見終わった後、このエピソードを思い出すと、
あの魔女は、死者の世界と生者の世界の両方を往き来する様な人ではないのかと考える様になりました。

是非皆さんも、この「 ブンミおじさんの森 」を観て下さい。
これをきっかけに、もっともっとタイの映画が日本で公開される様になるといいですね。

映画終盤にブンミおじさんは、夜の森の中を懐中電灯を照らしながら歩きます。
このシーンが何とも憧れを感じる至福のひと時です。
ニヘドンも、あんな夜の森ハイクをしてみたい。

映画を見終わった後、ぼんやりと「 生きる事 」「 死ぬ事 」を考えて、
結構、尾を引きますよ。はい。

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「 ブンミおじさんの森 」 粗筋( 映画の流れを二へドンの記憶で再現 )
斉藤敦子 : 字幕

森の中の鳥のさえずりが聞こえる。
スクリーンは黒一色。 そこにタイトルロールが流れる。
モノローグ 「 森や丘や谷を前にすると私の前世が現れる。」
下草を踏みしだく音が乾いた音を立てる。
雄牛が木に繋がれている。
近くで煙が白く棚引いている。
牛は時々、鼻を鳴らしながら首を振り、じっと何かを見ている。
遠くに夫婦と子供が座っている。
牛が力を入れてロープを引っ張るとロープは外れ、自由になった牛は
軽やかに草地の上を走り出す。
牛は水音を立てて沢を渡る。 川の水を飲んだりする。

短パンに帯を回しの様に締めたブンミおじさんがやって来て
「 ギャオ!」 と呼ぶ。
ブンミおじさんはロープを手に牛を引く。
牛は黙って、ブンミおじさんの後を歩く。

森の中にサルが立っている。
( 小型のニホンザルみたいなのでは無く、不出来なゴジラの子供の着ぐるみ
  みたいな怪しいサル。 大きさはチンパンジー位か? )
サルはシルエットになっていて、細かい部分迄は見えないが、
目が真っ赤になっている。

車に乗っている3人の人々。
1人は運転をしている。 そしてお母さんと、成人した息子。
撮影カメラは、車から見た風景を延々と映し出す。
( タイの撮影スタイルって、こういうのなのかしらん?
  10年前、バンコクのおじの家でTVドラマを見た時、1時間ほとんどカメラが切り替わらない
  ずっと同じ画面を見続けて、タイ語のセリフは意味分からないし、何が面白いんだろうと
  思った事が有ります。 画面が切り替わらないで、セリフだけ聞いているなら、
  ラジオ番組でいいじゃん、と思った次第。)
後部座席のおかみさんは、窓を開ける。

蚊帳の吊ってあるベッドの部屋で男は荷物をあちこちに置く。
おかみさんは、男と不法移民について話をする。
男「 独身だから嫁さんを世話してやれよ。」
女「 私だって独身よ。 でもラオス人って臭いでしょ。」
男「 ラオス人は臭いからな。」
( こういう人種差別発言が出て来ちゃうって、複雑な心境になりますよ。)

草地にゴーゴーと風の音が轟く。
ブンミおじさんは、自宅のベッドに仰向けになっている。
息子はブンミおじさんの人工透析の準備をする。
看護師「 4分の1間隔で。」
医師 「 大丈夫、 直ぐ済むよ。」

夜、屋外が見渡せるテラスに置かれたテーブルに人々が座っている。
息子・トン 「 ジェンおばさんって、若い頃綺麗だった?」
ジェン 「 やめて。 お恥ずかしいわ。」
トンの隣に女性の姿が現れる。
ジェン 「 フェイ、貴女なの? 」
ブンミ 「 フェイ。」
フェイ 「 ブンミ。 ごめんなさい。」
トン 「 この人、おばさんの妹? 」
ジェン 「 私の姉よ。」
フェイ 「 ブンミは病気なんでしょう? 」
トンはフェイの前に水のグラスを置く。

フェイ「 臨終の時に聞いた音が耳に残っているのね。」
ブンミ 「 俺を迎えに来たのか? 」
山鳴りがする。 が、虫の大合唱の方が勝つ。
トン 「 あの音は何だろう? 」
ブンミ 「 ジャーイか? 」
目の赤い猿の様な獣が地下から階段を上がって来る。
ブンミ 「 お前は誰だ? 」
ブンソン 「 ブンソン。」
ジェン 「 私の息子のブンソン? 私を覚えてる? 」
( 「猿の惑星ジェネシス」かと思ったよ。 笑。)
ブンソン 「 外に大勢集まって来ている。
ブンミ 「 お前の顔が何故か分からないんだよ。」
ブンソン 「 フェイが死んでから父さんのカメラを使って突き止めようと思ったんだ。
        写真芸術!」
ブンソンはカメラを首から下げ、森に入る。
ブンソン 「 カメラであれを撮ろうとしたんだよ。 僕は発明した。 成功した。
        枝から枝へ飛び回る彼らを。 話し掛けようとした。
        それが猿の精霊・リンピーイだった。 」
森の中に目の赤い猿が2匹現れる。
ブンソン 「 こんな姿になったのは猿の仲間になったから。
       妻を娶ってから北へ移って行ったんだ。
       その頃には元の世界を忘れてしまった。」
ブンミ 「 食事は済ませた。」
フェイ 「 ジェン。 仲良くしてる? 」
ジェン 「 包丁を向けて追い出したわ。」

ブンミはフェイにアルバムの写真を見せる。
フェイ 「 私のお葬式ね。」
ブンミ 「 電気が明るいと姿がよく見えないな。」
ジェン 「 今度は暗過ぎるわ。」
フェイはアルバムのページをめくり続ける。
ブン 「 ジェン。 この農場を継いでくれ。俺はもう決めたんだ。」
ジェン 「 私がこんな所に住めると思う?」
ブンミ 「 ここを出るな、と言う。」

ジャーイがやって来る。「 あれは何です?」
足の悪いジェンは、トレイを持って、ぎくしゃくと階段を上がる。
テーブルの上にブンミの写真とお供え物が乗っている。

朝方、ジェンがベッドで寝ていると、傍らのスツールにフェイが座っていて、
ふっと姿を消す。
ジャーイは森の中を杖をついて歩く。薬を吸わない様に、と言う。
ジャーイはラオスに結婚を考えている相手がいる。
ジェン 「 給料に不満が有ったの? 」

皆はタマリンドの木の手入れをしている。
ブンミはニコスに会う。 
「 ボンジュール。」
ニコスはラオスから逃げて来て、フランス語が喋れる。
8人の人々は輪になってシートの上に座りタマリンドの実を選別する。

ブンミはジェンに蜂の巣箱を出して見せる。
ブンミとジェンは指で蜂蜜を掬って舐める。
ブンミ 「 手を洗おう。」
ブンミは携帯電話でジャーイを呼びつけた。
「 今、養蜂場だ。 来てくれ。」

ジェンがタマリンドの木の下にいる。
ジェンは犬にタマリンドの実を食べさせる。
ジェン「 これ。」
ブンミ 「 これは俺のカルマなんだ。
      共産兵を沢山殺したな。ここでも虫を殺さない。」
ジェン 「 動物の言葉が分かるのね。」
ブンミはクッションを頭に当てると昼寝を始める。

***** 「 ブンミおじさんの森 ・ 前半 」 ・ 完 *****



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Posted by ニヘドン at 16:41│Comments(0)映画
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