2011年09月23日

「 わたしを離さないで 」

原題 : Never Let Me Go
邦題 : わたしを離さないで
監督 : マーク・ロマネク
出演 : キャリー・マリガン
アンドリュー・ガーフィールド
キーラ・ナイトレー
製作国 : イギリス、アメリカ
製作年 : 2010年
上映時間 : 105分 鑑賞日 : 2011年09月21日(水)
映画館 : シネマ ジャック&ベティ
料金 : 1,000円( レディース・デー )

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

いや〜、凄い体験をしてしまいました。
この映画を観ている最中に、関東地方を直撃した
台風 15号が、まさに映画館を含むエリアを移動中で、
客席にまで、外の暴風の音がビュービュー聞こえて来るのです。
奇しくもスクリーンの上では
人けの無い寂しい海岸で風の音がビュービュー言っていて、
臨場感たっぷりと言うのを通り越して、
映画の世界と自分が身を置いている現実の世界との境界線が、
ぐにゃぐにゃと形を崩す様な奇妙な感覚に陥ってしまいましたよ〜。


カズオ・イシグロの原作をベースに作られた映画です。
カズオ・イシグロについてはニヘドンは20年位前から興味を持っていました。
ニューヨークだったか香港だったか、
本屋で彼の作品を見つけたので買ってみました。
でも途中で投げ出してしまいました。
彼の英語は、難しい。
難解な表現をしているだけではなく、
何か人を寄せ付けない孤高のオーラが出ているように感じました。
例えばニヘドンのブログの文章が「 椎名誠 」であるなら、
カズオ・イシグロの文章は「 芥川龍之介 」なのです。
格調の高さが天と地程に違うのです。

カズオ・イシグロは日本の九州で生まれました。
両親は日本人で、日本で生まれたのだから、今日本に住んでいる私達と、何ら変わりが無くともおかしくはなかったのです。
でも、幼少時に家族で英国に移住し、
そこからカズオ・イシグロはオカシクなりました。
帰国子女やアメリカン・スクールを出た子逹は、英語ペラペラになるのは不思議ではありません。
でもカズオ・イシグロは、英語ペラペラを通り越して、
英語で小説を連作してブッカー賞を受賞してしまいました。
ブッカー賞って、日本で言えば芥川賞みたいなものではないですか。
英国はご存知の通り、階級社会です。
21世紀の今ですら、階級を越えた結婚は、なかなか難しい。
これは社会の仕組みが原因と言うよりは、人々の心の中に壁が有るせいなのでしょう。
そんな英国人に取って、極東出身のジャップなんて、どうでも良い筈なのです。
珍しく、文学的な作品を書く日本人が1人いたからと言って、気が付かなかった事にすれば良いではありませんか。
重箱の隅をつつく様に、彼の作品のアラ探しをすれば良いではありませんか。
なのにブッカー賞を取ってしまった。
…… 凄いね。凄い事ですよ、これは。
カズオ・イシグロの文学の力は、かように凄いものなのであります。
だけれども、日本国内でカズオ・イシグロの熱烈なファンと言う人に会った事が無いのは、
どういう事なんでしょうか。

この映画は素晴らしかったです。
前半は寄宿学校が舞台です。
この寄宿学校は「 特別 」な学校なんですが、どう特別なのかは、映画の後半で分かります。
その「 秘密 」は、戦慄の秘密です。
どんなホラー映画よりも怖く、その恐怖を拭い去る事が出来ないのは、
この映画で描かれている「 特別な 」「 秘密 」の出来事は、現にあらゆる国々で行われているだろうと思える事なんです。
だから恐怖は消えない。
この映画を観る事によって、最早現実を知らなかった事には出来ない、
そんな恐怖が観る者の心にベッタリと貼り付きます。

役者達がまた秀逸!
「 17歳の肖像 」で鮮烈なデビューを飾ったキャリー・マリガンが、また実にいい存在感を見せてくれます。
彼女は外面はキュートなんだけれども、
他のアイドルと一線を画しているのは、
「 17歳の肖像 」でもそうだったんだけれども、内面の歪みや秘密を持った役柄にピッタリなんですよね。
キャリー・マリガン最高!

何しろ、キャリー・マリガン ったら、女優の大先輩のキーラ・ナイトレーを差し置いて主役だからね。
\(◎o◎)/

でもこの作品の中のキーラ・ナイトレーも凄く良かった。
黒髪のキーラは謎めいていて、ゾクゾク。
時々、見せる憂いに満ちた視線の投げ方がダイアナ元妃を思い出させるのよね〜。
「 パイレーツ・オブ・カリビアン 」なんておためごかしのチャンバラ・ムービーなんて、もう2度と出ないで欲しい。
キーラはちゃんと演技が出来る正統派の女優さんなんだから、こういうちゃんとした映画作品を選んで出演して欲しいものです。

アンドリュー・ガーフィールドも素敵。
ちょっとナヨナヨした役柄が、母性本能をくすぐります。
この作品で、彼のファンは増えた筈。
この作品のセールスポイントは、
出演者達の美形度が高い事。
「 トワイライト・サーガ 」の比ではありません。
流石、英国はマーク・レスターを生んだ国だよなぁ。

絶対に観て欲しい映画作品です。



Posted by ニヘドン at 08:11│Comments(0)
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