2010年03月09日
「 セレンディップの奇跡 」
講談社文庫
「 フィルム 」
小山薫堂( こやま くんどう ) ・ 著
第9話 「 セレンディップの奇跡 」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
うーん。これは駄目だろう。
小山薫堂君、これは駄目だろう。
*****************************
主人公は自分の事務所を構えるカメラマンの堀井豊( ほりい ゆたか )。
付き合って8年になる彼女の乃梨子( のりこ )と堀井の41歳の誕生日を麻布のレストランで
祝う筈だった。 堀井が家を出ようとした時に乃梨子から電話が入る。
「 別れてほしいの。」
一方的に電話は切れる。
5分後、堀井は乃梨子に電話をするが繋がらない。
取り敢えず、自宅で1人でいたくなかったので、外へ出る。
バス停で老婆に話しかけられ、2人は色々と話をし、一緒のバスに乗る。
老婆はビデオカメラであちこち撮影をし、堀井にもレンズを向ける。
老婆がバスを下りようとした時、発作を起こし、堀井も一緒にバスを下りる羽目になった。
回復した老婆は、花屋に戻る。 堀井にネリネの花をくれた。
堀井は1人で歩き出す。 すると路上にはいつくばっている少女を見つける。
コンタクトレンズを落としたというので、堀井が見つけてあげる。
少女は親が近所でワインバーをやっているのでワインをおごると言う。
堀井は騙される覚悟で少女の後を尾いて行く。
着いた店は「 ビストロ・セレンディップ 」。
*******************************
ここまでは良い。 ここまでは、いつもの小山薫堂の世界だ。
フラれた中年男に対する、慈愛の眼差しで柔らかく描写されている。
小山薫堂ワールドに居心地の良さを感じる読者なら、じんじんきちゃいますよ。
でもこの後の展開が二へドンをがっかりさせた。
*******************************
全てが「 ヤラセ 」だったのだ。
そもそも乃梨子の「 別れる 」発言が嘘。
ビストロのオーナーは堀井の高校の同級生だった平田明( ひらた あきら )。
バス停の老婆は乃梨子の叔母。
コンタクトレンズを落とし、堀井を店に連れて来たのは、平田の娘の美香。
結局、後から乃梨子も店にやって来て、皆で堀井の誕生日を祝いましたとさ。
********************************
どうですよ、これ!?
人の心を弄ぶ様な事をして、いけしゃあしゃあと、「 お誕生日おめでとう!」なんて言える?
言われて嬉しい?
エイプリル・フールのたわいも無いジョークと違うじゃないですか。
大事な人にこそ、こんな事をしてはいけません。
自分の楽しい計画の為なら、少し位、びっくりさせてやって当然。
ネタばらしをしたら、自分は許されて当然。
こんな風に思う相手と、結婚したいですか?
二へドンはお断りです。
こんな、自分の書いたシナリオ通り、世の中が進むと思っている女王様とは付き合えません。
二へドンは出来ない。 愛していない相手には出来るかもしれないけれども、
愛している人には絶対こんな事は出来ない。
二へドンは、よく若い人たちから、結婚生活を長く続けるコツなんぞを訊かれる事が有ります。
何しろもう結婚して20年経つからね。
後5年で銀婚式だよ!!
最初から相性の良い相手だったというのが大きいと思うけれども、
1番の理由は、「 お互いに絶対に嘘をつかない 」と云う事かな?
よく二へドンの生活を見て、「 よくご主人、平気だね。そんなに家を空けて。」と人は言います。
それは、この20年間、二へドンが夫に対して1度も嘘を言った事が無いからこそ許してもらえるのでは?
二へドンが誰を追っかけていて、誰に心をときめかしているか、
今日道ですれ違ったイケメンが如何に素敵だったかとか、とにかく全部自己申告だもん。
絶対に嘘をつかないし、相手を騙さないし、相手を出し抜かない。
この蓄積の20年間の信頼は大きいよ。
相手を騙そう。騙せる。と思えるのは、相手を見下しているからこそ、出来る訳でしょう?
私 = 騙す人 = 立場が上。
あなた = 騙される人 = 立場が下。 って事でしょう?
対等の立場でいられなかったら、カップルは不成立じゃない?
ま、相手をブランドバッグと同じに見るなら、仮面夫婦としてやっていけるのかもしれないけど。
この短編集「 フィルム 」に収められている10編の短編を、今までいい感じに読み進めて来て、
第9話で、小山薫堂に、卓袱台ひっくり返されちゃった感じ。
何だかなあ・・・。
でも振り返ってみれば、どの短編にも、キャリアの有る、高びーな女性が多く描かれていたなあ。
オペラ「 ラ・ボエーム 」のミミの様な薄幸の女性は出てこないもんなあ。
小山薫堂って、人の心を大事にしない、高びーな女が好きなのかな?
二へドンは感心しないなあ・・・・・・・。
タイトル変えた方がいいんじゃない? 「 セレンディップの詐欺師 」。
***** 「 セレンディップの奇跡 」 ・ 完 ************
「 フィルム 」
小山薫堂( こやま くんどう ) ・ 著
第9話 「 セレンディップの奇跡 」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
うーん。これは駄目だろう。
小山薫堂君、これは駄目だろう。
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主人公は自分の事務所を構えるカメラマンの堀井豊( ほりい ゆたか )。
付き合って8年になる彼女の乃梨子( のりこ )と堀井の41歳の誕生日を麻布のレストランで
祝う筈だった。 堀井が家を出ようとした時に乃梨子から電話が入る。
「 別れてほしいの。」
一方的に電話は切れる。
5分後、堀井は乃梨子に電話をするが繋がらない。
取り敢えず、自宅で1人でいたくなかったので、外へ出る。
バス停で老婆に話しかけられ、2人は色々と話をし、一緒のバスに乗る。
老婆はビデオカメラであちこち撮影をし、堀井にもレンズを向ける。
老婆がバスを下りようとした時、発作を起こし、堀井も一緒にバスを下りる羽目になった。
回復した老婆は、花屋に戻る。 堀井にネリネの花をくれた。
堀井は1人で歩き出す。 すると路上にはいつくばっている少女を見つける。
コンタクトレンズを落としたというので、堀井が見つけてあげる。
少女は親が近所でワインバーをやっているのでワインをおごると言う。
堀井は騙される覚悟で少女の後を尾いて行く。
着いた店は「 ビストロ・セレンディップ 」。
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ここまでは良い。 ここまでは、いつもの小山薫堂の世界だ。
フラれた中年男に対する、慈愛の眼差しで柔らかく描写されている。
小山薫堂ワールドに居心地の良さを感じる読者なら、じんじんきちゃいますよ。
でもこの後の展開が二へドンをがっかりさせた。
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全てが「 ヤラセ 」だったのだ。
そもそも乃梨子の「 別れる 」発言が嘘。
ビストロのオーナーは堀井の高校の同級生だった平田明( ひらた あきら )。
バス停の老婆は乃梨子の叔母。
コンタクトレンズを落とし、堀井を店に連れて来たのは、平田の娘の美香。
結局、後から乃梨子も店にやって来て、皆で堀井の誕生日を祝いましたとさ。
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どうですよ、これ!?
人の心を弄ぶ様な事をして、いけしゃあしゃあと、「 お誕生日おめでとう!」なんて言える?
言われて嬉しい?
エイプリル・フールのたわいも無いジョークと違うじゃないですか。
大事な人にこそ、こんな事をしてはいけません。
自分の楽しい計画の為なら、少し位、びっくりさせてやって当然。
ネタばらしをしたら、自分は許されて当然。
こんな風に思う相手と、結婚したいですか?
二へドンはお断りです。
こんな、自分の書いたシナリオ通り、世の中が進むと思っている女王様とは付き合えません。
二へドンは出来ない。 愛していない相手には出来るかもしれないけれども、
愛している人には絶対こんな事は出来ない。
二へドンは、よく若い人たちから、結婚生活を長く続けるコツなんぞを訊かれる事が有ります。
何しろもう結婚して20年経つからね。
後5年で銀婚式だよ!!
最初から相性の良い相手だったというのが大きいと思うけれども、
1番の理由は、「 お互いに絶対に嘘をつかない 」と云う事かな?
よく二へドンの生活を見て、「 よくご主人、平気だね。そんなに家を空けて。」と人は言います。
それは、この20年間、二へドンが夫に対して1度も嘘を言った事が無いからこそ許してもらえるのでは?
二へドンが誰を追っかけていて、誰に心をときめかしているか、
今日道ですれ違ったイケメンが如何に素敵だったかとか、とにかく全部自己申告だもん。
絶対に嘘をつかないし、相手を騙さないし、相手を出し抜かない。
この蓄積の20年間の信頼は大きいよ。
相手を騙そう。騙せる。と思えるのは、相手を見下しているからこそ、出来る訳でしょう?
私 = 騙す人 = 立場が上。
あなた = 騙される人 = 立場が下。 って事でしょう?
対等の立場でいられなかったら、カップルは不成立じゃない?
ま、相手をブランドバッグと同じに見るなら、仮面夫婦としてやっていけるのかもしれないけど。
この短編集「 フィルム 」に収められている10編の短編を、今までいい感じに読み進めて来て、
第9話で、小山薫堂に、卓袱台ひっくり返されちゃった感じ。
何だかなあ・・・。
でも振り返ってみれば、どの短編にも、キャリアの有る、高びーな女性が多く描かれていたなあ。
オペラ「 ラ・ボエーム 」のミミの様な薄幸の女性は出てこないもんなあ。
小山薫堂って、人の心を大事にしない、高びーな女が好きなのかな?
二へドンは感心しないなあ・・・・・・・。
タイトル変えた方がいいんじゃない? 「 セレンディップの詐欺師 」。
***** 「 セレンディップの奇跡 」 ・ 完 ************
Posted by ニヘドン at 00:16│Comments(0)
│読書
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