2010年08月17日

エドウィン・ファン・デル・ハイデ & 古舘徹夫

Charlie.K さんと云う方が、Japanoise.net のイベントの撮影をよくしてくれます。
2010年08月01日(日)「 青山ノイズ vol.1 」の開演前~水谷聖さんの演奏までの
スライドショーがYouTube にアップされました。

素晴らしいスライドショーなので、ここに貼り付けておきますね。
是非、Charlie.Kワールドをお楽しみ下さい。




よく、「 あの人の頭の中を見てみたい。 」って思う事有りますよね?
このCharlie.Kさんのスライド・ショーを見ると、彼の頭の中の1部が垣間見えた気がします。
「 ふーん。 こんなスタイリッシュな世界を追い求めて生きてるんだ。」
素敵です。

たまたま先日、DOMMUNEの放送現場を観覧する機会に恵まれました。
その時のトークで、ライブは「 今、ここ 」の現場なのだと言う話になりました。
「 今 」でも 「 ここ 」でも無い、第3の場、
それがインターネットの世界なのだと言う話しに納得度120%。
Charlie.K さんのスライド・ショーを見ると、彼がライブ、つまり 「 今、ここ 」の世界を
如何に愛しているかが分かります。
彼の視点が、小さき物達に温かく注がれている事に、嫌でも気付かされます。
灰皿、観葉植物、コンセント、天井のライト、クッション・・・・・・・・・。
ありとあらゆる小さき物達、それらに忘れずに視線を注ぐ、Charlie.Kさんの心にジーンと来ます。

所謂「 ファン 」の人達って、熱心さは買うけれども、如何せん視野が狭いと言うか、
自分が見たいものしか見ていない嫌いが有るのですよ。
つまり自分が好きなアーティストしか見ていないんですよね。
だから、会場のCay の灰皿って、どんなデザインだっけ? 椅子のクッションって何色だっけ?
・・・・・・・・・・・誰も答えられませんよね。普通。
そういうアイテム達も、ライブ会場に在ったと云う偶然と必然の哲学を、
Charlie.Kさんのスライド・ショーを見ながら考えてしまいました。

********************************

では、「 青山ノイズ vol.1 」 最初のアクトのレポを書きます。
18:00 オランダ在住のエドウィン・ファン・デル・ハイデ & 古館徹夫が
ステージに姿を現します。
ハイデは、黒い長袖Tシャツに、黒いズボンという地味ないでたち。
チャーリー・ブラウン頭が可愛いかな。( !?)
古舘徹夫は白いシャツに黒いズボン。 不精ひげが哲学者っぽい雰囲気。
先ずは2人もラップ・トップの前に陣取り、ノイズ出力開始!!

世間一般の人が「 ノイズ 」 と云う言葉を聞いて、容易く( たやすく )想像出来る通りの
音が会場を取り巻きます。
次第にノイズ以外の物は、この部屋には無いとでも言わんばかりの
蝉しぐれの様な爆音maxが繰り出されます。

古舘徹夫は客席から見て左側( 下手《 しもて 》)の背の低いテーブルで膝立ちで
左手に吸いさしの煙草を持って、余裕の様子。
( 二へドンがいつも通っているクラシック音楽の演奏会では有り得ない様子に笑いが
  こみ上げて来ちゃった。www )
恐らく、ノイズ・ミュージックを初めて聴くお客さんは、この単調な音の唸りをどの様に聞いたら
良いのか躊躇うでしょう。 或いは、ただ単にうるさいと思うだけなのかもしれません。
でもね、二へドンは、あちこち旅をして、チベットから北朝鮮まで様々な所を歩く人だから、
1つ断固として譲れない部分が有ります。
それは日本人の大半が「 自然は美しい 」「 自然は静かだ 」と言う幻想を信じてしまって
いる事、これは絶対に違うと言わざるを得ません。

二へドンに言わせると、「 自然は醜い 」 「 自然は轟音だ 」と断固として思います。
「 自然は柔らかく、人間を優しく包み込んでくれるもの 」だと思っている人は、
要するに自然の中に出て行った経験が不足しているだけなんですよ。
井上靖先生のお陰で、シルクロードに夢を抱く日本人は多いですが、
実際にあんな中国奥地まで行って御覧なさいよ!
トイレの施設なんか無くて、女でも何でも、野糞をしながら行程を進めて行くんですよ。
そんな自然の何処が美しいと?
自然は不便で、怖くて、「 うるさい!」 と怒鳴っても、決してその音を止めてくれない
しょーも無い存在なのです。
地鳴りの音も、風の音も、波の音も、その余りにも強烈な音量に、夜もおちおち眠れません。
山奥の原生林に蔓延る蝉の大群の蝉しぐれが、如何に爆音か、都会の蝉の声しか知らない人には
想像も出来ないと思います。
わんわんわんわん、周囲の空気が振動して、自分の身体まで揺さぶられる感覚がするんですよ。
聞きたくも無い、蝉しぐれが、ずっと耳の中に注入されるのは拷問以外の何物でも有りません。
二へドンは、大田舎の生の蝉しぐれの方が、人の神経を毛羽立たせる不快感が有ると思っているので、
今、会場を包んでいる音は、きちんと計算の上でセーブされた、大人しい音に思ってしまいます。

でも、このハイデ&古舘 デュオのノイズは、かなり自然の音の風景を意識した構成になっていて、
蝉しぐれが止むと、今度は啄木鳥のノッキングの連なりが続いて行きます。
不意に雷の爆音が響き渡ります。
音量自体は大きいのだけれども、大自然の音の「 得も言われぬ理由無き恐怖感 」 を煽るものが
ノイズ・ミュージックには無いのです。



同じカテゴリー(ジャパノイズ・イベント)の記事画像
告知 : 2010年09月のジャパノイズ・イベント
やっぱり凄かった! 永遠のノイズ少年達
「 キャバレー機関車 」
全ては阿佐ヶ谷から始まった。
玉三郎が100人束になってもかなわない男
Woodstock Cafe @ お茶の水
同じカテゴリー(ジャパノイズ・イベント)の記事
 告知 : 2010年09月のジャパノイズ・イベント (2010-09-12 17:59)
 浜松の皆さん! 伊藤まく氏が今晩・・・!! (2010-08-07 16:58)
 やっぱり凄かった! 永遠のノイズ少年達 (2010-08-02 00:35)
 「 キャバレー機関車 」 (2010-07-18 11:04)
 全ては阿佐ヶ谷から始まった。 (2010-07-04 16:11)
 玉三郎が100人束になってもかなわない男 (2010-06-28 23:27)

この記事へのコメント
二へドン様

とても正確なレポートをありがとうございました。
そうですね、先日のコンサートでどの程度のことができたのか?自分でも不安に思っています。
しかし、「 自然は醜い 」 「 自然は轟音だ 」と言われるニヘドンさんの意見はとても刺激的です。
それに見合うものが前回、叶わなかったのは大変残念なのですが、
次に挑戦しようと思っている音は;
「何も聞こえませんか、あのすさまじい声、普通人々が静寂と言っている声が、地平線全体にわったって叫び声をあげているのが聞こえませんか?」というビューヒナーのテキストです。
そうですね、確かに、自然の直接の脅威を実感されたかたには、僕のようにテキストを通じてせまってみようとしている者の音には物足りなさがあるのかもしれません。
「 得も言われぬ理由無き恐怖感 」をできれば実現したいと思っています。

敬具
古舘徹夫
Posted by TETSUO FURUDATE at 2010年08月20日 03:12
> 古舘徹夫様。

   こんにちは!
   私の拙文をお読み頂き、ありがとうございました。
   私は普段、クラシック音楽をメインに聴いています。
   伊藤まくさんをきっかけにノイズを聴く様になり。
   丁度1年が経った、ノイズ初心者です。

   クラシック音楽に出来ない事、
   クラシック音楽がやろうともしない事、
   クラシック音楽が目指そうともしない事、
  
   そんな諸々の事柄をノイズに、ついつい求めてしまうので、
   僭越な事を本文で言い過ぎたかもしれません。

   またノイズについて色々経験を深めて行きたいなと思っています。
   新しい表現を模索する方々を応援しています。
   また、どこかで、古館徹夫さんの「 音 」を聴かせて下さい。
   楽しみに待っています。
Posted by ニヘドン at 2010年08月24日 06:45
ニヘドンさま
返答ありがとうございます。
実は、ぼくもヨーロッパのノイズ・ミュージシャンに馬鹿にされるほど欧州のクラシック音楽が大好きで、それをベースにノイズを演奏しています。ニヘドンさんがクラシック音楽好きそうなので、不覚にもよろこんで書き込んでしまったのかもしれません。
本当は12音技法以前のブルックナー、マーラーを中心に(いえその他も、もっとバッハも含めた古典も忘れることはできません。)聴いていたのですが、ビューヒナーについてお話した次のぼくの企画からベルグを切り離すことはできません。
しかし、ノイズ・ミュージックがシュトックハウゼンやジョルジュ・リゲッティから一歩でも進歩しているかどうか?もちろんそこにパンク・ロックのマインドが付加されているのですが、それ以上のものがあるのかどうか?不安が多いです。もちろん、なにも生み出さないノイズという結語もあり得ます。
敬具
古舘徹夫
Posted by 古舘徹夫 at 2010年08月25日 03:09
> 古舘徹夫様。

  非常に興味深いお話をありがとうございます。
  「 なにも生み出さないノイズ 」 のアイデア、刺激的ですね。
  私は、毎日ブログ記事を書いている副作用で、
  「 何か考えなくちゃ! 」「 何か感じなくちゃ! 」 と半ば  
  強迫観念に憑り憑かれて音楽を聴いていた様な気がします。

  私を、全ての固定観念から解放してくれる様なノイズを
  いつか聴かせて下さいませ。
Posted by ニヘドンニヘドン at 2010年08月26日 11:27
※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。