2009年03月28日

「 失われた肌 」

2009年03月28日(土)

東京の京橋に有る映画美学校において
「 失われた肌 」の試写会が有ったので行って来ました。
監督はヘクトール・バベンコです。
「 蜘蛛女のキス 」の監督だと言えば、皆さん 「 あー、あー、あー! 」と頷い、て頂けると思います。
主演がですね、( 実はニヘドンは今まで彼の出演作品を1本も見た事が無いと言う大失態をしてしまいましたが ) ガエル・ガルシア・ベルナル でございます。
「 ラテンの貴公子 」ガエル。 くは〜、きいた〜。
いいわ♪ 彼、いいわ!
もうニヘドンが、ガエルを頂いてしまいます。
この映画は04月11日 ( ニヘドンの誕生日や! ) からヒューマントラストシネマ文化村通りで公開されますが、もうガエルさんは売約ずみです。
むふ。

今日のお供は、しまさんでした。
映画の後、「 失われた肌 」の話で盛り上がりました。
しま 「 さすが、『 蜘蛛女のキス 』の監督です。 話が分かり難いです!」
二へ 「 あー。 でも理屈が大好きな男の人は、こういう映画は好きかも。」
この映画は、「 誰にでも良く分かる単純明快な説明 」をしてくれないので、
映画を見終わった後、色々な事を考えられて面白いです。
映画を見た後にも、頭の中にストーリーが残るというのは、ある意味お買い得な映画なのかも。
分かり易い映画は、見終わった瞬間に思考が現実に戻っちゃいますからね。

二へドンがすっかり魂を奪われたガエルは、映画の中ではリミニという役柄です。
翻訳家で、家では映画の字幕翻訳をやっています。
依頼があると、講演会や会議での同時通訳を行います。
二へドンは19歳の時 ( つい最近だね! つい数年前だね!?)
バベル翻訳学院という専門学校で映画翻訳のコースに在籍をしていた事がありまして、
リミニの仕事は当時の二へドンの憧れの職業だったので、これがスイッチになちゃいました。
もう二へドンとリミニが他人じゃなくなっちゃいました。
( 当時二へドンがこのコースで学んだ事は、映画翻訳は、とあるおば様が仕事を独占していたので
  彼女に個人的に弟子入りでもしないか、彼女が姿を消すかしない限り、仕事はまず貰えないと
  云う事でした。 最近、独占市場にひびが入って来たのでビックリしておりますよ。 )
リミニは幼馴染のソフィアと結婚して、12年経ちます。

映画の冒頭にピアノの音が流れます。
撮影のほとんどはアルゼンチンのブエノスアイレスで行なわれたそうですが、
アルゼンチンの街並みとピアノの音が妙にマッチしています。
トリオ・リベルタのファンの方は、是非この映画をご覧下さい。
リベルタがテーマとしている ピアソラの音楽の街が、実際の映像として目の前に
映し出されるのは興味深いと思います。
勿論、ブエノスアイレスの古い街並みを強調してはおらず、現代的な高層ビルも多く
写り込んでいます。 それなのに男女の愛憎劇がぴったりのヨーロッパ的な魅力の有る街角です。

ソフィアがリミニの手を取って、躊躇う様に扉を開けてパーティ会場に入って行きます。
リミニは白いシャツに黒いスーツを着ています。 
ネクタイは、今の日本での流行ではない、細身のネクタイです。
この映画の中ではリミニは概ね、このファッションで登場します。

ソフィアの母親のフリーダがグラスをチンチン鳴らして乾杯の音頭を取ります。
フリーダは美男美女のカップルが大層ご自慢なのです。
このパーティは、リミニとソフィアの結婚12周年の記念パーティだったのです。
パーティ会場で、12年前の結婚パーティの映像が流されます。
リミニが自分の愛について真面目に語るシーンも登場します。
パーティがお開きになった後、ソフィアはフリーダに告白します。
「 他の誰かから聞かされるのは嫌だから・・・・・・・。 私達、離婚するの。」

!! ビックリですよ! 
勿体無いですよね。 あんな良い男と12年も結婚していて、別れるんですか!?
二へドンだったら、絶対にそんな勿体無い事はしないですけど。
映画の中では、離婚の理由は一切語られません。
映画の冒頭から謎が始まるんですよ。 何で2人は別れる事になったのだろう?
そもそも何故2人は結婚したんだろう?
どちらかの浮気? DV? どちらかが子供が欲しかったのに、どちらかが拒否した?
お互いに仕事を優先したかった? 愛が冷めた?
映画のどこかにヒントが隠されていたかなあ? もう1回見てみないと分からないなあ・・・・。

リミニが自宅で映画の翻訳をしているシーンが何度も出て来るのですが、
最初はアメリカ映画の翻訳をしていました。
次にインド映画の翻訳をしているんですよ。
へー。 アルゼンチンでもインド映画が公開されるんだ。 へー。

場面は変わり、街中で下着姿にロングコートを着たモデル女性の撮影が行なわれていました。
彼女の携帯が鳴り、撮影を中断し携帯に応答する彼女は激昂し、携帯を投げ捨ててしまいます。
その撮影の様子を見ていたリミニが、携帯を拾って彼女に手渡します。
モデルの名前はべラ。
で、これがきっかけでリミニとべラの2人は夜にディスコに行くのです。
 ( 猥雑な照明がクラブと云うよりディスコだったんだな、これが。)
リミニはルックスが良い男なんだけど、ヘロイン常習癖がありまして、
このディスコの男子トイレでも他の常習者と共にスニッフィング( 粉を鼻で吸い込む事 )
しちゃってます。
男子トイレなのに何故か1人、女性の常習者もおりまして、吸い終わったリミニがトイレを出る時、
たまたま女性と一緒に出る事になってしまいました。
リミニはべラの元に行こうとするのですが、べラが激怒するんですよ。
トイレから一緒に出て来た女性との仲を誤解しちゃったんですね。
べラの言い分が凄いです。
「 あの女が出て来る時に口を拭っているのを見た。」
 ( へ? キスでもしてたって事ですか?)
「 口紅も剥げてた。 」
 ( へ? トイレに行く前にご飯を食べて、トイレに行ったのに化粧ポーチを忘れただけかも?)
「 あんな女にしゃぶらせて。」
( !!!!!! そ!! そ・・・・そういう論理展開になっちゃうのですかあ!? 
  そりゃ、確かに、シャブってはいましたが、しゃぶってはいません。
  ・・・・・・・・・ 大人の映画でございました・・・・・・。 )

翌朝、カフェでリミニは妻と会います。
離婚後の家具や荷物の分配などの話し合いをします。
( 憎み合って別れたカップルだったら、当人同士が顔を合わせる事も無いのだけれども、
  お友達同士みたいに当たり前に顔を合わせるリミニとソフィアの関係が不思議。
  不自然にビジネスライクでも無いし。 )

老婆心な注意事項。
  モデルのべラが、元妻のソフィアに雰囲気が酷似しています。
  うっかりすると混乱するので、これからこの映画を見る人は2人の容貌を早く覚えちゃってね。
  しまさんも、べラがソフィアだと思いながら映画を見てしまったそうですから。
  べラもソフィアも髪の色は、ほとんど黒に見えるダークブラウンでウェービーで、
  髪を後ろで束ねたり下ろしたりします。 
  髪型を変えられると、似た顔つきの人は区別が付き難いんですよ!

リミニの部屋にべラがやって来ます。
リミニの仕事用PCの横にソフィアの写真が額に入れられて置かれているのを見てショックを受けます。
べラはリミニに今すぐに写真を処分する様に要求します。





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Posted by ニヘドン at 21:13│Comments(2)映画
この記事へのコメント
いつもお誘いいただいてありがとうございます!!
 こういう難解系、自分ではあまり観ないので誘っていただいて刺激になりました。「蜘蛛女のキス」はどちらかというとわかりやすい倒錯系、こちらはちょっと難解な倒錯系、つまりアブノーマルな恋愛観を撮るのが好きな監督なんでしょうかね。

 それで私なりに今回もっとも疑問に思った点を絞ってみました。
1.なんでこの主人公の男、結婚「する」の?
ニヘドンさんのおっしゃていた「どういう経緯で離婚したのか?」という疑問の先には、「何故この主人公、こんなに多情多恨なのにしちめんどくさい結婚を何度も繰り返すんだ?」というどうしようもないまどろっこしさに対する怒りにも似た感情が沸々と沸いてきます。

2.ソフィアとベラの違いがわからないよ。
これは疑問というか、お願いです。最初ソフィアとベラが同一人物だと勘違いしていたため、娼婦風の出で立ちでモデルをして携帯で彼氏ともめてその携帯を叩き壊しているシーンを見て「いつの間に新しいボーイフレンドと??」そしてクラブ・・・じゃない、ディスコでいきなりキレている姿にも違和感があり、「まるでひとが変わったようだ」とか思っていました。ホントに違う人だったんですね。写真をゴミ箱に捨てるシーンで初めて気づきました。外国人の顔の違いはわかりにくいから、せめて髪型や髪の色で違いを出してほしい。

3.ベラが交通事故で亡くなったショックはどこに?
このショックで飯の種のフランス語を忘れてしまうほどであったにも関わらず、さっくり再婚してしかもベラを思い出しもしない様子。だけれど相変わらずフランス語は思い出せない。この矛盾。それともフランス語がわからなくなったのは別の原因があるのか?

4.ナンシーへの執着心
スポーツクラブのインストラクターと女性客とのラブアフェア、といういかにもなシチュエーションであるにも関わらずナンシーが他の男とも関係があると知ったときの反応。・・・そういう女じゃないですか。いかにもそういうことしてそうじゃないですか。お互い本気であるわけないじゃない、そういう雰囲気がぷんぷんしているにも拘らずなぜあんなにキレる?遊びっぽいシチュエーションでも純愛なのか?

以上です。相手を破滅させてまでも自分のところに戻ってくることを望むソフィアの執着心のコワさとか、主人公の落ちぶれっぷりとか、様々な見所と共にアルゼンチンの町並みが美しい映画でした。シューマンの「子供の情景」はトラウマになりそうです。。。
Posted by しまじろう at 2009年03月30日 22:41
> しまじろう様。

   難解系は、映画を見た後にたくさん色々な事を考えられる
   から、映画を見たあとに白熱の議論が楽しめますよね。
   と言う事は、1人で見るより、複数で見に行った方が
   映画の後のお茶 or 食事 or 飲み会が盛り上がると
   言う感じですね。

   これをきっかけに、南米の映画も続けて見てみたくなりました。
   ラテンの男の恋愛感と結婚観を研究してみたいですよ。
   ラテン男と結婚する事になった時に困らないように
   傾向と対策を準備しておきたいと思います。
 
   ( ガエルと結婚する気になっている女より )

   また何か有ったらお声をかけますねー。
Posted by ニヘドンニヘドン at 2009年04月01日 09:44
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