2009年06月04日

東洋と西洋の宗教感

2009年06月03日(水)

写真は甲斐善光寺の境内に鎮座しているお地蔵さん。
なかなか良い表情だったのでパチリ!

甲斐の国で、同じ日に奇しくも東洋と西洋の宗教画を両方見る機会を得た。
ニヘドンは自分で自分の事を、フツーのニッポンジンよりは宗教心が有る方だと思っている。
( 特定の宗教には入信していないが…。
あ! 前島秀国氏の信者だと自分でブログに書いていたか……!?
おい、前島の秀さん、信者になっても何のご利益も無いぞ!?
え!? 信心が足らない!? )

山梨県甲府エリアへの日帰りバスツアーで、東洋と西洋の宗教画を見るとはどう言う事かをこれから書いて行こうと思う。

まず午前中に甲斐善光寺を参拝した。
ニヘドンは甲斐の国は私用や添乗の仕事で嫌と云う程、訪れている。
が、甲斐善光寺は今日、生まれて初めて参拝する。
布引観音とか、天橋立近くの籠( この ) 神社等々、オカルト的サブカルチャーが好きそうなマニアックな場所は日本津々浦々訪れているのだが…。

金堂の拝観料 500円を払って中に入ると、天井の 「 鳴き龍 」( なきりゅう ) を試す立ち位置の床に足跡のシールが貼られている。
そこから御戒檀巡りをするには右側に向かうが、反対側の左側も見て欲しい。
16幅の「 地獄極楽図 」が並んでいる。
義務教育が無かった時代、字の読めない人々にも、仏教の教え、特に死後の世界感を教え説く為に、この絵は描かれた。
高名な画家が描いた作品では無いし、美術的価値は無い。
けれども説得力あり過ぎ!!

ニヘドンは、境内に1軒だけ有る土産物屋の 「 かぶと屋 」で本を1冊購入した。
「 ものがたり 甲斐善光寺 」
戒光祥出版 / 吉原浩人・著
500円 ISBN4-900901-29-6
この本は甲斐善光寺が所蔵する仏像、絵、墓、石ひ 等を来歴や伝説を絡めて解説している91ページの小冊子である。
もし貴方が甲斐善光寺からの帰りに自分でハンドルを握らなくても済むのであれば、是非、読んでもらいたい。
帰りの車中で丸々読めてしまう分量だ。

しかして、この本の中で 「 地獄極楽図 」は一言も言及されていない。
それ位に歴史的価値の無いものなのか…?
(^_^;)

そこでニヘドンが観音様の様に 「 地獄極楽図 」に救いの手を差し伸べ、「 地獄極楽図 」の存在をあまねく世間に知らしめる―。

絵は先ず、現世で暮らす人々の姿から描き始める。
そして野辺送りの様子が描かれる。
野辺には5体程の亡きがらが置かれている。
それぞれ、死後経った日数が違うらしく朽ち果てる度合いが冷酷に描き分けられている。
しかし、どの亡きがらも、真っ黒な長い髪が大地に広がっている。
壮絶な絵だ。
人間の死にランクなぞ無いと思えて来る。
犬死になんてあり得ない。
死は等しく壮絶だと思う。

さんずの河原の絵が有る。
河原で幼な子達が小石を積み上げる。
1つ積んでは父の為……
2つ積んでは母の為…
3つ積んでは兄弟の為……。
しかし鬼達がやって来て金棒で積み石を崩してしまう。
幼な子達は泣きながら再び石を積み上げる。
何度積んでも崩され、何度積んでも崩される。
幼な子達は、再び人間として生まれ変われる事を願いながら石を積む以外に他する事が無い。
人間の主要成分はタンパク質だと思うが、タンパク質が何故ここまで深い絶望を感じなければならないのだ?
絵の左端には菩薩像が大きく描かれ、菩薩に救われた子供達が天に昇っていく。
1枚の絵に、絶望と、救いの両方が描かれている。 深い・・・・・・・。

後は、皆様、どこかで見た事のある地獄絵が並んでいきます。
閻魔大王の審査を受ける人々、針山地獄に刺さっている人、舌を抜かれる人、
鬼に喰われる人・・・・・・・・・・・。
亡者達の様子が陰惨極まりない姿で延々と続きます。
スプラッターなホラーの世界。
ホラー映画なんて見た事の無い人々は、こんな絵を見たらおしっこジャージャー出ちゃう程
恐れおののいたと思う。
こんなに目的にかなった絵は見た事が無い。

さて、甲斐善光寺を出た4時間半後、「 白金( しろがね )工房 」 という白金( はっきん )をメインに作っているアクセサリーメーカーを訪れた。
ここのミュージアム・コーナーで、カメオ作品のコレクションを見た。
世界一サイズのカメオなど、展示品は様々だったが、二へドンが1番心を惹かれたのが、
「 聖書物語 」というカメオ作品のシリーズだった。
カメオの作者は Hans Dieter Roth ( ハンス・ディーター・ロート )。
1948年ドイツのイーダーオーバーシュタインの生まれのカメオ作家。
「 聖書物語 」は、新約聖書のイエス・キリストの生涯を10枚以上のカメオ作品に彫り上げている。
受胎告知から磔刑後の復活まで。
1枚ずつカメオに描かれたキリスト教の世界を見て行く内に、甲斐善光寺の「 地獄極楽図 」を嫌でも連想した。
「 聖書物語 」に付けられた解説文には、「 当時ラテン語で書かれていた聖書を一般の人々に分からせる為に、聖書物語の絵は必要なものであった。 」とある。
仏教とキリスト教という異なる宗教だが、大衆に教義を教える為という同じ目的の為に作られた作品を同じ日に比較出来た事は稀に見る珍しい経験だったと思う。

カメオの聖書物語は、ほの蒼く光が下から浮かび上がって来るようなミステリアスな雰囲気。
作品からは全く 「 音 」がしない。
宗教画はよく、いかにも宗教音楽が聞こえて来そうなものが多いが、H.D.ロートの作品は全くの無音。
映画「 ダヴィンチ・コード 」を見た人も多いと思うが、ダヴィンチの描く「 最後の晩餐 」と全く違う 「 最後の晩餐 」も見る事が出来る。

「 聖書物語 」は、生者の生気が全く感じられない。
逆に 「 地獄極楽図 」は描かれているのは死者ばかりなのに、妙に生気に満ち溢れている絵だった。
実に面白い。

***** 「 東洋と西洋の宗教感 」 ・ 完 **************

下記の記事が完成しております。

2009.06.03 「 ロシア料理『 マトリョーシカ 』 のAランチ 」
           http://nihedon.hama1.jp/e105859.html
2009.06.03 「 日帰りバスツアーが当たった! 」
           http://nihedon.hama1.jp/e105788.html


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Posted by ニヘドン at 00:39│Comments(0)歴史散歩
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