2008年05月19日
緊急ステートメント by 前島秀国
前島秀国氏より、下記の「 緊急ステートメント 」がありましたので、お読みくださいませ。
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MSCのみなさんへ
前島です。
今日(5月18日)から、初台のオペラシティで「コンポージアム2008 スティーヴ・ライヒを迎えて」のリハーサルが始まりました。今回、ぼくは公演全体のレポートを書くことになり(媒体名は然るべき時が来たら、改めてお知らせいたします)、いま、そのリハーサルを聞いて帰ってきたところです。
すでにみなさんにお知らせしたように、この「コンポージアム2008」ではライヒの新作――といっても2年前の作曲ですが――《ダニエル・ヴァリエーションズ》が日本初演されます。映画『マイティ・ハート/愛と絆』の題材にもなった、ウォールストリート・ジャーナルのダニエル・パール記者(2002年にイスラム原理主義者によって斬首処刑された)をテーマにした作品です。
こう書くと、「社会的な問題を扱った、とても難しそうな現代音楽」というイメージを抱くかもしれません。しかし、実際はその正反対です。作曲者の名前と曲名を知らずに聴けば、これほどエモーショナルで美しい曲が2006年に作曲されたとは、誰も想像がつかないはずです。
ライヒ自身がCDのライナーノーツで書いていますが(恥ずかしながら、ぼくが日本語に訳させていただきました)、ダニエル・パールというのは、実はクラシックの教育を受けたヴァイオリン奏者でもあったのです。パールは世界各地を取材した時、ヴァイオリンを取り出しては、現地の人々と自由なジャム・セッションを楽しんだということです(このあたりの逸話は、映画ではほとんど描かれていません)。そのヴァイオリン奏者のパールが、突然殺されてしまった。生きていれば、いまも世界各地でヴァイオリンを演奏していたことでしょう。だが、不条理にも、パールの(音楽)生命は永遠に奪われてしまった。
そんなダニエル・パールを追悼するため、ライヒは《ダニエル・ヴァリエーションズ》の中でヴァイオリン(より正確に言えば弦楽四重奏)に重要な意味をもたせ、ヴァイオリンにとても人懐っこいソロ・パートを弾かせています。その音楽は、ライヒが「ミニマル・ミュージックの作曲家」と呼ばれていることとか、パールとライヒがユダヤ人であることとは、まったく関係がありません。さまざまな生の可能性を持っていたはずの“ヴァイオリン奏者パール”。その彼を、ライヒは音楽家のひとりとして心から追悼し、パールが残した「音楽の希望」を若い世代に伝えようとしているのです。《ダニエル・ヴァリエーションズ》の生演奏をぼくが聴いたのは、2006年の世界初演以来、今日のリハーサルが2年ぶりでしたが、生身のヴァイオリン奏者があたかもパールの霊が乗り移ったように演奏するのを目の当たりにし、世界初演の時には気が付かなかった新たな感動に心を打たれました。
すでにチケットは完売ですが、リハーサルの結果次第では、追加席が発売される可能性があるかもしれないとのことです(詳しくは東京オペラシティチケットセンターにお問い合わせください)。仮に演奏会が無理だとしても、CDがすでに出ていますから、どうかみなさん、難しいゲンダイオンガクなどと思わず、ぜひとも《ダニエル・ヴァリエーションズ》を聴いていただきたい。パキスタンで殺されたジャーナリストを扱った社会派作品などと思わず、ひとりのヴァイオリン奏者の生と死と希望を扱った、非常にヒューマンな作品だと思ってチャレンジしていただきたい。そこから得られる感動は、ぼくが思うに、例えば映画『ノットゥルノ』から得られる感動と、同じ種類のものだと思うのです。
そんなわけで、「コンポージアム2008」全日程の取材が終わるまで、しばらく「ドンドン日記」のチェックやコメント書き込みをお休みします。悪しからずご了承ください。
前島秀国(サウンド&ヴィジュアル・ライター)
(C)Hidekuni Maejima 禁無断転用
***** 「 緊急ステートメント by 前島秀国 」 ・ 完 ********
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MSCのみなさんへ
前島です。
今日(5月18日)から、初台のオペラシティで「コンポージアム2008 スティーヴ・ライヒを迎えて」のリハーサルが始まりました。今回、ぼくは公演全体のレポートを書くことになり(媒体名は然るべき時が来たら、改めてお知らせいたします)、いま、そのリハーサルを聞いて帰ってきたところです。
すでにみなさんにお知らせしたように、この「コンポージアム2008」ではライヒの新作――といっても2年前の作曲ですが――《ダニエル・ヴァリエーションズ》が日本初演されます。映画『マイティ・ハート/愛と絆』の題材にもなった、ウォールストリート・ジャーナルのダニエル・パール記者(2002年にイスラム原理主義者によって斬首処刑された)をテーマにした作品です。
こう書くと、「社会的な問題を扱った、とても難しそうな現代音楽」というイメージを抱くかもしれません。しかし、実際はその正反対です。作曲者の名前と曲名を知らずに聴けば、これほどエモーショナルで美しい曲が2006年に作曲されたとは、誰も想像がつかないはずです。
ライヒ自身がCDのライナーノーツで書いていますが(恥ずかしながら、ぼくが日本語に訳させていただきました)、ダニエル・パールというのは、実はクラシックの教育を受けたヴァイオリン奏者でもあったのです。パールは世界各地を取材した時、ヴァイオリンを取り出しては、現地の人々と自由なジャム・セッションを楽しんだということです(このあたりの逸話は、映画ではほとんど描かれていません)。そのヴァイオリン奏者のパールが、突然殺されてしまった。生きていれば、いまも世界各地でヴァイオリンを演奏していたことでしょう。だが、不条理にも、パールの(音楽)生命は永遠に奪われてしまった。
そんなダニエル・パールを追悼するため、ライヒは《ダニエル・ヴァリエーションズ》の中でヴァイオリン(より正確に言えば弦楽四重奏)に重要な意味をもたせ、ヴァイオリンにとても人懐っこいソロ・パートを弾かせています。その音楽は、ライヒが「ミニマル・ミュージックの作曲家」と呼ばれていることとか、パールとライヒがユダヤ人であることとは、まったく関係がありません。さまざまな生の可能性を持っていたはずの“ヴァイオリン奏者パール”。その彼を、ライヒは音楽家のひとりとして心から追悼し、パールが残した「音楽の希望」を若い世代に伝えようとしているのです。《ダニエル・ヴァリエーションズ》の生演奏をぼくが聴いたのは、2006年の世界初演以来、今日のリハーサルが2年ぶりでしたが、生身のヴァイオリン奏者があたかもパールの霊が乗り移ったように演奏するのを目の当たりにし、世界初演の時には気が付かなかった新たな感動に心を打たれました。
すでにチケットは完売ですが、リハーサルの結果次第では、追加席が発売される可能性があるかもしれないとのことです(詳しくは東京オペラシティチケットセンターにお問い合わせください)。仮に演奏会が無理だとしても、CDがすでに出ていますから、どうかみなさん、難しいゲンダイオンガクなどと思わず、ぜひとも《ダニエル・ヴァリエーションズ》を聴いていただきたい。パキスタンで殺されたジャーナリストを扱った社会派作品などと思わず、ひとりのヴァイオリン奏者の生と死と希望を扱った、非常にヒューマンな作品だと思ってチャレンジしていただきたい。そこから得られる感動は、ぼくが思うに、例えば映画『ノットゥルノ』から得られる感動と、同じ種類のものだと思うのです。
そんなわけで、「コンポージアム2008」全日程の取材が終わるまで、しばらく「ドンドン日記」のチェックやコメント書き込みをお休みします。悪しからずご了承ください。
前島秀国(サウンド&ヴィジュアル・ライター)
(C)Hidekuni Maejima 禁無断転用
***** 「 緊急ステートメント by 前島秀国 」 ・ 完 ********
男たちへ・・・アゲイン
緊急! なんと久石さんの指揮で歌えるぞ
今年度MSCメンバー課題 第1回作品
こんな映画を見てます ・・・・ その2
こんな映画を見てます・・・・ その1
ジンベイザメの秀さま 仕事が一段落して一服中
緊急! なんと久石さんの指揮で歌えるぞ
今年度MSCメンバー課題 第1回作品
こんな映画を見てます ・・・・ その2
こんな映画を見てます・・・・ その1
ジンベイザメの秀さま 仕事が一段落して一服中
Posted by ニヘドン at 08:27│Comments(4)
│前島・MSC
この記事へのコメント
現代音楽って苦手って人は多いと思うんですが、ライヒさんの曲は聴きやすいので一度トライしてみて欲しいです。
坂本龍一さんや久石譲さんが嫌いじゃない人ならすんなりと入れると思いますよ。
「ダニエル・ヴァリエーションズ」は特にオススメです。
ライヴで聴けるなんて、オペラシティに行ける人が羨ましいです。
坂本龍一さんや久石譲さんが嫌いじゃない人ならすんなりと入れると思いますよ。
「ダニエル・ヴァリエーションズ」は特にオススメです。
ライヴで聴けるなんて、オペラシティに行ける人が羨ましいです。
Posted by ナオ at 2008年05月20日 13:29
> ナオさん。
実は二へドン、坂本龍一氏は、高校生の時から好きでした。
YMO をリアルタイムで聞いていた二へドンでございます。
二へドン、またもやワンクリック詐欺に遭ってしまったようで、
今朝オペラシティに電話をしたら、チケットあるよと言われちまいましてですね・・・・・・・・・。
何だか明日行くような事になってしまいました。
ところが、皆が心配してくれています。
「 1週間、間違えるな! 」
「 間違えて国際フォーラムに行くな! 」
「 昨年のBEE の半券で強攻突破するな!」
「 カツ丼をオーダーして、無いと言われて逆ギレするな!」
「 足開いてパンツ見せるな! 」 ・・・・・・・・・・・・・・
だ・・・・大丈夫。 多分、他人の振り見てわが身を直せるかもしれない・・・・・。 多分。。。。。hope.........
実は二へドン、坂本龍一氏は、高校生の時から好きでした。
YMO をリアルタイムで聞いていた二へドンでございます。
二へドン、またもやワンクリック詐欺に遭ってしまったようで、
今朝オペラシティに電話をしたら、チケットあるよと言われちまいましてですね・・・・・・・・・。
何だか明日行くような事になってしまいました。
ところが、皆が心配してくれています。
「 1週間、間違えるな! 」
「 間違えて国際フォーラムに行くな! 」
「 昨年のBEE の半券で強攻突破するな!」
「 カツ丼をオーダーして、無いと言われて逆ギレするな!」
「 足開いてパンツ見せるな! 」 ・・・・・・・・・・・・・・
だ・・・・大丈夫。 多分、他人の振り見てわが身を直せるかもしれない・・・・・。 多分。。。。。hope.........
Posted by ニヘドン at 2008年05月20日 18:39
きっと一週間間違えて出直す事になっても「行って良かった」って思える演奏会になるはずですよ
坂本さん、私もずっと好きだったんです♪
スティーヴ・ライヒさんの事も以前紹介していたので偶然耳にしていました。
YMOは小学校の運動会で必ずかかってたのですが、何でYMOなのかが未だに不思議です(笑)
坂本さん、私もずっと好きだったんです♪
スティーヴ・ライヒさんの事も以前紹介していたので偶然耳にしていました。
YMOは小学校の運動会で必ずかかってたのですが、何でYMOなのかが未だに不思議です(笑)
Posted by ナオ at 2008年05月21日 01:26
> ナオさん。
確かに! 行って良かった演奏会でした。
と言うより、行って大興奮の演奏会でした。
YMOが運動会でかかっていたのは、多分学校の先生がYMO好きだったのでは!?
あの、時代、インテリ層は、こぞってYMOを聞きましたよね?
確かに! 行って良かった演奏会でした。
と言うより、行って大興奮の演奏会でした。
YMOが運動会でかかっていたのは、多分学校の先生がYMO好きだったのでは!?
あの、時代、インテリ層は、こぞってYMOを聞きましたよね?
Posted by ニヘドン at 2008年05月22日 05:56
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