2010年06月04日

「 カティンの森 」

原題 : KATYN
邦題 : カティンの森
監督 : アンジェイ・ワイダ
脚本 : アンジェイ・ワイダ
製作年 : 2007年
製作国 : ポーランド
上映時間 : 122分
使用言語 : ポーランド語
    ドイツ語、ロシア語
字幕 : 久山宏一
原作 : アンジェイ・ムラルチク 
     「 カティンの森 」 集英社文庫

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まずは、「 カティンの森 」 を語る前に、アンジェイ・ワイダ監督の事について。
二へドンはアンジェイ・ワイダ監督が好きなんです。
どの位好きかと言うと、黒澤明監督よりずっと好き。
日本人なのに、非国民と言われても良いです。
二へドンは高校生の時から、映画館通いを始めました。
当時は世の中に「 名画座 」 と言われる物が沢山有って、
二へドンは学校が休みの日曜日には、名画座で2本立てとか3本立ての
映画を見まくっていました。 しかも学生料金で!!
よく覚えていないけど、確か500円位だったような気がします。
はっきりとアンジェイ・ワイダ監督作品との出会いは覚えていません。
ただ、名画座で、時々アンジェイ・ワイダ特集なんかが組まれて、それで
3本立てなんかをちょくちょく見ていました。
もしかしたら、見始めたのはOLになってからだったかもしれません。
兎も角、はっきりと覚えていない程、昔からアンジェイ・ワイダ監督は好きでした。

ジョン・トラボルタが Saturday Night Fever で日本の社会を沸かせている時、
二へドンは暗い、ボロい映画館の中で ( シアターなんて言葉無かったよ!?)
アンジェイ・ワイダ監督が写す、煉瓦工の姿に胸を熱くしていたものでした。
日本の若いオネイチャン達がディスコで踊っている暇に、
二へドンはやっぱり薄汚い場末の映画館で、アンジェイ・ワイダ作品を見ていたのです。

この「 ドンドン日記 」 を書くようになってから、節操も無く、自分の好みも主義も無く
ただ闇雲に行き当たりばったりの映画鑑賞をする様になり、
今回、この「 カティンの森 」が実に久々のアンジェイ・ワイダ作品なのでありました。

久々にアンジェイ・ワイダの映画を見て、唸らされました。
「 凄い! やっぱアンジェイ・ワイダは凄い!!」
二へドンがまだ20歳前後だった時に魅了された、その作風と、寸分違わぬ力量で
もうすっかり心が捻くれた二へドンを感嘆させるアンジェイ・ワイダって、
もう本物だと思います。
今回の「 カティンの森 」は、殊更に凄かった。

このストーリーは、第二次世界大戦中のポーランドが舞台です。
ポーランドは1939年09月01日にドイツに侵略されます。 
同じ年の09月17日にはソ連が侵略を開始します。
ソ連側の捕虜となったポーランド人将校達約15,000人が行方不明になります。
当初は謎とされて来ましたが、1943年春、カティンで数千人の遺体が発見されて
事件が明るみに出ました。
ドイツはソ連の仕業だと言い、ソ連はドイツの仕業だと言いました。
戦後、ポーランドはソ連の衛星国となった為、
事件の真相 「 カティンの虐殺事件は、ソ連の犯罪だった 」 事を語る事はタブーと
なりました。
が、1989年ポーランドの雑誌が、虐殺がソ連の犯罪であると証拠を掲載。
1990年、ソ連政府は当時のソ連の内務人民委員部( 後のKGB)主導で行なわれた
事を認めました。

アンジェイ・ワイダ監督の父親も、このカティンの虐殺事件の犠牲者であったそうです。
この映画のタイトルロールの冒頭「 両親に捧げる 」 というスーパーが出て来ます。

この映画の素晴らしさは、淡々と描かれている事です。
この様な悲惨な題材を扱う時には、往々にしてヒステリックに泣き叫んだり、
「 あの人が真犯人なんですよ! 」 と声高に糾弾したりするものじゃないですか。
でも、それって実は逆効果なんですよね。
自分が泣きたい時に、誰か他の人が先に泣き始め、どの泣き方が余りにも激しいと、
思わず自分は泣きそびれるって事、よく有りませんか?
だから映画自体が、「 私達は被害者なんですよー!!」 と泣き叫んじゃうと、
こちらは逆に1歩退いちゃう。
でも、「 カティンの森 」 は、直接的には誰をも糾弾する事無く、
淡々と「 事実 」 を積み上げて行きます。
「 真実 」 の前に、説明は要らないですよ。

アンジェイ・ワイダが実に「 大人 」 で有ると思い知らされました。
創り手が感情に流されたら、その作品である映画は、人々に正しく伝える役目を
果たせない。
アンジェイ・ワイダは、その事を熟知して、この映画を完成させています。
その余りにも見事な感情の抑制に、未熟者の二へドンは、ただただ舌を捲くばかり。












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Posted by ニヘドン at 00:44│Comments(0)映画
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