2011年03月29日

「 首筋の目 」

Brillia Shortshort Theater
イケメンショート
上映期間 2011年03月02日〜

うう…嬉しいわぁ。
シネコンでは絶対に上映してくれないメキシコのエロ・ムード爆発の俳優ガエル・ガルシア・ベルナルが出演しているショート・フィルムを上映してくれるのですもの。
長編映画だけを観て
「 あたし、ガエル・ガルシア・ベルナルが好きなんだ! 」と仰っているお嬢さん、
ファンなら横浜の Brillia Shortshort Theater にガエルを観に来なければっ!!
格好いいよ!
色男に徹する役柄も良いけれど、
この「 首筋の目 」の様なハードボイルド・チックにピストルを構えるガエルも素敵よ
しかし彼は黒いスーツがビシッと決まる人だよなぁ。

***********

邦題 : 首筋の目
原題 : El Ojo en la Nuca
監督 : Rodrigo Pla
製作国 : メキシコ
製作年 : 2001年
上映時間 : 25分00秒
種別 : ドラマ
鑑賞日 : 2011年03月26日(土)
映画館 : Brillia Shortshort Theater
料金 : 一般 1,000円
フライヤーの解説より : 軍事政権下の南米ウルグアイ、
   男の父親は何者かに襲われる。
   何年か後、男はウルグアイに戻る。
   父に何があったのかを知るために。

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

んー。 フライヤーの解説が、ちょっと違うような気がします。
ガエル演じる男は、父親に何が有ったのかは、殺害現場を目撃
していて既に知っていて、ただ父親の敵を討つ為に、
移住先のメキシコからウルグアイに戻って来ます。
そして仇と「 決闘 」をするのです。

二へドンは、多様な南米の政治経済の基礎知識は有りません。
が、第1回世界青年の船の参加青年として、南米各国の20代の青年達と
船の中という密室に閉じ込められて(笑)73日間を過ごしました。
だから、知識ででは無く、「 ニオイ 」で南米の人達を知っていると
言えます。
彼らと毎日24時間、ずっと一緒って言う経験は凄まじかったよ。( 笑 )

Brillia Shortshrot Theater では、映画を観終わったお客さんが、
お気に入りの作品にシールを貼るボードを設置しています。
それを見れば、日本人の観客の心を掴んだ作品が一目瞭然なのです。
残念な事に、この「 首筋の目 」は、あんまりシールが貼られていませんでした。
うーん。 勿体無いなー。

そこで、この作品に、もっと深く潜り込める様にお届けします。
「 ウルグアイ 」の基礎知識。
ウルグアイと言えば、GATT のウルグアイ・ラウンドと云う言葉は新聞によく
登場しますので、ウルグアイと云う言葉だけなら、耳慣れているでしょう。
じゃあ、どんな国?
地理的に言うと、ブラジルとアルゼンチンに挟まれています。
南米の中では、面積はそんなに大きい国ではありません。
でも、サンバとタンゴに挟まれた国の音楽って、どんなんだろう? と
二へドンはウルグアイの音楽事情に凄く興味有ります!!

鉱物資源には乏しく、牧畜や林業が盛んです。
ちょっと面白いデータが有って、2009年の
「 世界180カ国の汚職が少ない国のランキング 」では
ラテンアメリカではチリとウルグアイが1番高く、同率の25位。
綺麗な国なのよ。
でも、二へドンはウルグアイに行った事が無いので、
汚職が少ないと言うのが不思議です。

ウルグアイと言えば、他の南米諸国同様、軍事政権下に有ったという暗黒の歴史を
持っています。
グレゴリオ・アルバレス元将軍の軍事政権時代、
違法な取調べ、殺人、拷問、リンチ、処罰が頻繁に行なわれ、
今でも行方不明者が多数、存在するそうです。
1986年に、軍部の陰謀でしょうね。 これらの犯罪行為を裁く事が
出来ない様に、「 失効法 」が施行されました。
「 失効法の無効化 」を求めて、市民運動が展開されますが、
なかなか長い苦難の道のりを辿ったのは、想像に難くないでしょう。

そう云えば、将軍暗殺を企てるストーリーの映画
「 山猫は眠らない 」( 1992年 )という名作も有りますが、
二へドンはまだ観ていないのです。 しょぼぼ~ん。

では、映画のシーンを追って行きましょう。

**********************

男達の荒々しい声が聞こえてくる。
画面には男達の足元だけが映っている。
「 跪け!」 
1989年04月16日ウルグアイで
「 失効法の無効化 」の是非を問う国民投票が行なわれた。
国民投票の1週間後、メキシコシティでのシーン。

パブロ( 演じるのはガエル・ガルシア・ベルナル )が
部屋のドアをガタガタ揺するが、中の女性はガンとして開けない。
女性はドア越しに話をする。「 死んだ人は戻って来ないのよ。」
パブロ 「 せめてキスを。」
女性 「 別れのキスを?」
パブロは怒ってドアを蹴る。
諦めたパブロはドアの下からメモを差し入れる。
ドアを背に、床に座り込んでいた女性は、そのメモを読み、膝を抱えて呆然とする。

海の上をボートが進む。
ボートの客はパブロ。 彼は割れてひびの入ったサングラスをセーターで拭う。
04月24日、パブロはウルグアイの首都、モンテヴィデオに上陸する。
パブロの従兄弟のディエゴが運転する車の助手席にパブロは座る。
車は街の中を走って行く。
ディエゴ 「 従兄弟として言わせてもらう。こんなの間違ってるぞ。」
パブロは車を下り、ディエゴも車を下り、2人は固くハグをする。
パブロ「 親父を殺した者には死を。」

港の近くのビルの屋上で怪しい雰囲気の男達が銃を用意している。
介添え人が、「 ディアス将軍 」と名を呼び、将軍にピストルを渡す。
次に「 ウルティア君。」 とパブロの姓を呼び、同じくピストルを渡す。
ディアス将軍とパブロは離れて立ち、向かい合う。
介添え人が数を声高に数える。
パブロはじっとピストルを握ったまま。
先ず、最初に将軍がピストルを発砲する。 が、何も起こらない。
どうやら弾は命中しなかった様だ。
介添え人が叫ぶ。「 Fire! 」
パブロが引き金を引こうとした、その瞬間、将軍は、へなへなと床に
崩折れてしまう。
意外な展開に、パブロは怪訝な顔で将軍を見詰める。
するとそこへ警察官達が踏み込んで来る。
パブロは「 ディエゴ! ディエゴ! 」と呼ぶ。

パブロは警察署で中年女性の判事に事情を訊かれる。
判事「 明朝9:00に。」
パブロは警察署を出る。
報道陣が数名入口で待ち構えており、パブロは写真を撮られる。
女性のリポーターがTVカメラに向かってニュース原稿を読む。
「 最後の決闘が行なわれてから30年、今朝2人の男が決闘を行使しました。」

どしゃ降りの雨の中、パブロはびしょ濡れになって立っている。
パブロの目の前には、パブロが少年だった頃、父親と暮らしていた家が建っている。
パブロの背後の八百屋の親父が出て来てパブロに話し掛ける。
「 そこの住人なら10年も前にメキシコに行った。」
ずぶ濡れのパブロの目の前に、従兄弟のディエゴが運転する車が現れ停まる。
助手席には、映画の冒頭でドアを開けてくれなかったパブロの彼女が座っていた。
パブロは黙って後部座席に乗り込む。

パブロ、ディエゴ、彼女の3人は、店に入りTVでニュースを見る。
パブロ 「 何故来た? 」
彼女は答えない。 が、左手をパブロの頬に当てる。
彼女 「 お父さんの死を受け入れて。」
パブロ 「 君に何が分かる? 」
パブロはディエゴの頬に自分の手を当てる。
そしてパブロはディエゴに言う。「 明日迄に銃を用意してくれ。」
パブロはディエゴの額にキスをする。

パブロは1人で無人の元の我が家に窓から侵入する。
家は長年誰も住んでいないので、お化け屋敷状態だった。
家具は傾き、或いは乱暴に積み上げてある。
このシーンで、コントラバスとバンドネオンの音楽が挿入され、凄くいいムード。
心に沁みます。
パブロは、何も家具が置かれていない部屋の床に、メキシコからずっと持ち歩いて
いる割れた眼鏡を置く。

回想シーンは白黒の画面になる。
まだ少年だったパブロは、父が自宅の床に押し付けられ、脅されていた時、
箪笥の下に身を潜めていた。
そして父と目が合うが、必死に声を出さない様に身を縮ませていた。
パブロは父が撃ち殺される現場を目撃してしまう。

その記憶をまざまざと思い起こしたパブロは、現在では家具も取り払われて
ガランとしている、殺害現場の床に寝そべって声を上げて泣く。
ラウーラがやって来てパブロを抱きしめ、彼の額に何度も何度もキスをする。

昔の家を出たパブロとラウーラは、外を歩き、海辺まで出て来る。
いつも映画では、ガエル・ガルシア・ベルナルの自慢( ? )のお尻を
ご開帳してしまうのが恒例なのですが、流石に今回の短編にはご開帳は無い
だろうと思いきや!
パブロは海辺で立ちションでございます。
ええええ~!? 要るの? このシーン、必要だったの?
しかも長い。 そんなにいっぱい溜めてたの? 膀胱に悪いよ。

パブロは父親の形見の割れた眼鏡を海に捨てる。
おいおいおいおい。 
パブロが意を決して、前へ進んで行こうという描写だとは思うけれども、
父ちゃんの形見と、おしっこが同等かいな?

ラウーラがパブロの背中に身を寄せている。
パブロ 「 メキシコへ帰ろう。」
パブロとラウーラは手をつないで歩く。
そこへ、ディエゴが車で来た。
ディエゴ 「 頼まれた物を持って来た。」
パブロは受け取った紙包みを破き、中身をズボンの中に押し込む。
ラウーラ 「 何なの? 」
パブロ 「 何でも無い。」
パブロはラウーラと抱き合い、彼女を残したままディエゴの車に乗り
ディエゴと一緒に警察署に出頭する。

警察署の入り口には報道陣達が集まっている。
女性判事が判断を述べる。
「 ACT 1531 判事としてここに判断を下す。
  決闘法は使用停止とする。」
将軍は立ち上がる。
パブロも立ち上がって銃を構え、将軍の額を打ち抜く。
すかさず警官がパブロを撃ち、パブロは床に倒れる。

スーパーが出る。「 軍人達は現在もその罪を裁かれていない。」
エンドロール。

******************************

パブロの嘘付き。 一緒にメキシコへ帰ろうって言ったのは嘘だったじゃん。
将軍なんか爺ィだから、放っとけば、年取って死んじゃうのに。
こういう復讐の仕方って、何も生まないじゃん。

このショートフィルムのメッセージを、是非、汲み取って欲しいのです。






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Posted by ニヘドン at 08:10│Comments(0)映画
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