2010年09月05日

小松亮太 CD「 ピアソラ / ブエノスアイレスの夏 」

息子ちゃんの部屋に乱入した時に
見慣れないCDを見つけました。
バンドネオンの小松亮太さんのCDでした。
小松良太さんは、「 イマジン七夕コンサート 」で
2度程、生演奏を聴いた事が有るのだけれども、
本当にいいですよねー。
日本人離れした味わいを出してくれてます。
しかもまだ若いのに!!

そんな彼のCDが我が家に転がっていたとなれば、
これは即聴きです!!
「 息子ちゃん、このCDどうしたの? 」
「 ああ、これ、おばあちゃんの。」
「 ピアソラって、知ってる?
 ほら、トリオ・リベルタがよく弾く奴。
 KAMOMEで、息子ちゃんも聴いたでしょ?」
「 そんなの知ってるよ。 ボケ!」
「 ま、ともかく、これ、下に持って行って聴いてもいいでしょう?」
「 あ、ああ。 うん。」
よし!!

早速聴いてみました。
ところで、最初にお断りをしておかなければならないのですが、
二へドンは神奈川フィルのコンサートマスターの石田泰尚様の心の恋人です。
これは二へドンが勝手にそうほざいているだけなのですが、そういう事にしておいて下さい!!
で、石田泰尚様がピアソラの曲をメインに演奏するトリオ・リベルタというグループを組んでいます。
二へドンに取って、ピアソラと言えば、トリオ・リベルタ。
トリオ・リベルタと言えばピアソラなのでございますよ。
トリオ・リベルタのライブを追っかけて早6年。
もう二へドンの脳髄に、トリオ・リベルタの演奏が沁みこんでいるのです。

決して小松良太さんの演奏が駄目だと言うつもりは毛頭有りません。
でも、トリオ・リベルタ・オンリー・ユーの耳を持った女が、小松良太を聞くとどう聞こえるのか、
この記事では、そういう耳で聞いた感想を書いて行きますね。

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演奏 :

小松亮太( こまつ りょうた ) / バンドネオン
フェルナンド・スアレス・パス / ヴァイオリン
オラシオ・マルビチーノ / ギター
ヘラルド・ガンディー二 / ピアノ
エクトル・コンソーレ / コントラバス

アストル・ピアソラ / ブエノス・アイレスの夏
( Astor Piazzolla ~Verano Porteno )

1. 92丁目通り ( 3’10” )
   La Calle 92
2. ブエノス・アイレスの夏 ( 3’51” )
   Verano Porteno
3. 鮫 ( 3’10” )
   Escualo
4. デカリシモ ( 3’02” )
   Decarisimo
5. 天使のミロンガ ( 6’22” )
   Milonga del Angel
6. 恋人もなく ( Vn & Bandoneon ) 
   アウグスティン・バルディ作 / 小松亮太・編曲 ( 4’05” )
   Nunca Tuvo Novio ( A.Bardi )
7. チャウ・パリ ( 小松勝・編曲 ) ( 2’58” )
   Chau Paris
8. 五重奏のためのコンチェルト ( 8’38” )
   Concierto para Quinteto
9. ブエノス・アイレスの冬 ( 6’04” )
   Inviemo Porteno
10. アディオス・ノニーノ ( 6:12 )
    Adios Nonino
11. 想いのとどく日 ( Bandoneon Solo ) 
    カルロス・ガルデル作/ ボーチョ・パルメル編曲 ( 3’57” )
    El Dia Que Me Quieras ( C. Gardel )
( Total Time 52’17” )

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全般的に凄いなあと思ったのは、リズムがくっきりタンゴになっている事。
リズムのベクトルが否が応でも縦方向なんですよね。
日本人のリズムのベクトルは横方向の人が多いみたい。
西洋の音楽がノリ易いのは、この縦方向のリズムに秘密が有るんだろうな。

では、1曲ずつ感想を書き連ねて行こうかな。

・ 「 92丁目通り 」
  ヴァイオリンの音が石田泰尚様と比べると動物性油脂の様なぬめりが感じられて、
  これが好きか嫌いかで判断が分かれるかもです。
  二へドンは石田様のヴァイオリンの透明感が好きなので、石田様に軍配。
  石田様がトリオ・リベルタでピアソラを演る時には青年の様な初々しさを秘めつつ
  大人の男のエロ格好良さが見事に融合しているんです。
  タンゴ・ファン、ラテン・ミュージック・ファンの方々には、是非ともこの
  トリオ・リベルタの都会的センスに裏打ちされたエロ格好いい演奏を聴いて欲しいなあ。

  あ、さてさて、小松亮太チームの演奏はと言いますと、エレキ・ギターの音が
  トロピカルな味わいを加味し、ラテンの熱気を感じる事が出来ます。
  タイトルの92丁目と云うのは、ピアソラが住んでいたニューヨークの通りです。
  二へドンも20代の頃はニューヨークが大好きで、お金を貯めては、せっせとニューヨークに
  足を運んでおりました。
  寝ぐらにしていたホテルが42丁目から45丁目にかけてだったので、
  92丁目と言われても、どんな街並みだったのか、皆目思い出す事が出来ません。
  タンゴのリズムのせいでしょうか。 ニューヨークと云うよりもブエノス・アイレスの町並みが
  しっくり来る曲です。

・ 「 ブエノス・アイレスの夏 」
  各楽器の音の絡み具合は、やっぱりトリオ・リベルタの方が絶妙だよなあ。
  ピアノの音が無機質で、もとエロさが欲しいかも。
  ヴァイオリンのギコギコギコ・・・・と出す音も、石田様の遊び心が勝っているなあ。

・ 「 鮫 」
  冒頭のゾクゾクする緊迫感も、トリオ・リベルタの演奏に軍配。
  このCDのレコーディング・メンバーの構成は、音が丸くて、油でしゃぼん玉を作って
  飛ばしている様なんですよ。
  全体的にテンポも単調で、トリオ・リベルタが如何にドラマチックにアレンジしているか
  分かろうと言うものです。
  トリオ・リベルタの「 俺様 」風の自分たちの味付けを如何に出しているかなんですよね。


  


Posted by ニヘドン at 18:54Comments(0)CD

2010年09月05日

「 キャタピラー 」

邦題 : キャタピラー
監督 : 若松孝ニ
出演 : 寺島しのぶ、
大西信満、
篠原勝之、
製作年 : 2010年
製作国 : 日本
上映時間 : 87分

フライヤーの解説より : 戦場から帰ってきたシゲ子の夫・久蔵は、顔面が焼けただれ、四しを失った無残な姿。それでもなお衰えない久蔵の食欲と性欲に、戸惑いつつも尽くすシゲ子だが…。
『 実録・連合赤軍 』から2年。静かな田園風景の中で、1組の夫婦を通して戦争の愚かと悲しみを描く、若松孝ニ監督の新境地。
寺島しのぶは本作で、第60回ベルリン国際映画祭最優秀女優賞を受賞した。

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

芥川龍之介の「 芋虫 」を読んだのは、ニヘドンが何歳の時の事だったのか…。
時期はまるで覚えていないのだが、そのおどろおどろしい世界はずっと記憶に残っている。
短編だったが、自分が今まで考えた事も無い設定に、身の毛もよだつ思いがしたものだった。

今回、映画「 キャタピラー 」は、新潟の美しい田園風景の中で撮影が行われている。
昔ながらの茅ぶきの木造の日本家屋が郷愁を誘う。
この田園風景の四季の移ろいも、ちゃんと描かれているのは流石。
鳥の鳴き声や、蝉の鳴き声など、音の演出もバッチリ。
風景の映像だけ取り出せば、平和の雰囲気に満ち満ちている。
日本映画で、四季折々の美しさを取り込んだ作品は多い。
ニヘドンが今年見た作品で印象に残っているのは、「 Flowers 」と 「 剣岳 〜 点の記 」。
でも、映画の中に四季の美を取り込む巧みさは、「 キャタピラー 」に軍配。
「 キャタピラー 」には田んぼで働く人々の躍動感までもが取り込まれている。
それはまるで、ベートーヴェンが音で現した田園風景を、そのまま映像に置き換えたかの様だ。
恐らく、この映画を見た人々は、ストーリーのショッキングさに心を奪われたかと思う。
でもニヘドンは、芥川龍之介の「 芋虫 」を何十年も自分の中に温めて持っていたので、むしろ「 キャタピラー 」が見せてくれた田園風景に心が慰められた。
  

Posted by ニヘドン at 16:43Comments(0)