2009年04月22日

第131回 オルガン・1ドル コンサート

第131回 オルガン・1ドル コンサート
「 春のめざめ 」
“ Le reveil du printemps ”


日時 : 2009年04月22日(水)
 11:30 開場 12:10 開演
  終了予定 12:50
会場 : 横浜みなとみらいホール 大ホール
料金 : 100円 或いは 1ドル
出演 : ジャン=フィリップ・メルカールト
演目 : リヒャルト・ヴァーグナー /
     楽劇「 トリスタンとイゾルデ 」より「 前奏曲 」
 J.S.バッハ / キリストは死の絆につかせたまえり BWV 718
 ジャン・アラン / 幻想曲 第2番
 J.S.バッハ / 栄光の日は来たりぬ BWV 629
 J.S.バッハ / 今日神の子は勝利をおさめ BWV 630
  マルセル・デュプレ / 2つの素描
   - ホ短調
   - 変ロ短調
     
     アンコール : セザール・フランク / アンダンティーノ ト短調

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

演奏開始は12:10なのですが、12:00になると、客席の照明が消されました。
みなとみらいホールの専属ホール・オルガニストの三浦はつみさんがステージに登場です。
三浦さんはグレーのスーツ姿です。
やや、髪を短くしたのでしょうか?
彼女のお話は、
・ オルガン・1ドルコンサートの今年のテーマは「 ルーシーが奏でる四季のメロディ 」である事。
( ルーシーと云うのは、みなとみらいホールのパイプオルガンの名前です。)
・ 新しくオルガン・1ドルコンサートと、みなとみらいクラシック・ クルーズのクーポンラリーが始まった事。
・ 次回のオルガン・1ドルコンサートは、オルガニスト・インターンシップ第7期の終了演奏会である事。
の4点が語られました。
そして、次回の演奏を行う春日朋子( かすが ともこ )さんがステージに現れました。
春日さんは白いジャケットに黒いズボンと云うシンプルな出で立ちです。

三浦・姉さんが春日・妹にインタビューをします。

三浦 「 ここで1年過ごしてどうでしたか? 」
春日 「 あっという間の1年間でしたが、
    ホール・オルガニストとして学ばせて頂き、充実した1年でした。」
三浦 「 ホール・オルガニストは結構色々な仕事をしているものなんですよね。
   来月の演奏会の聞きどころは? 」
春日 「 ペンテコステ ( 聖霊降誕祭 )にまつわる話は
    コンサート当日でお話したいと思います。」
次回の演奏会のタイトルが、「 ルーシーが奏でるペンテコステ 」なのです。
春日 「 プログラムは多彩で、バッハから始まり、
    インターンシップの先輩の柳澤文子さんも共演して下さいます。」
三浦 「 バッハからロマン派、連弾も有り、楽しみですよね。
 来月の演奏会を控えて、今どんなお気持ちですか? 」
春日 「 私なりに精一杯頑張ります。」
三浦 「 春日さんは1年前にお会いした時は本当に静かな人だったんです。
   こんなに静かで、人の前でお話出来るのかな?と思ったんですが、
    1年間横浜の風に当たって、変わりましたね。」

- いえいえ、何の何の。
 春日さんはニヘドンの心の恋人・石田〜リンよりも、ちゃんとお話が出来ましたよ。( 笑 )

引き続き三浦・姉さんが話を続けます。
「 今年はみなとみらいホールにお越し頂くお客様が20万人を超える予定です。
20万人目のお客様には記念品が有る様です。」
そして、みなとみらいホールで行われる
「 サイレントシネマとパイプオルガン 」のPRがなされました。
三浦さんが言います。
「 サイレント映画とパイプオルガンの共演は恐らく日本ではこれが初めてでしょう。
私は以前 『 メトロポリス 』と云うサイレント映画を見たんですが、
   大変ドラマチックで感動しました。
演奏は全て即興です。
映像に合わせて演奏します。
それでは、オルガン1ドルコンサートに初登場する
   ジャン=フィリップ・メルカールトさんをお迎えしましょう。
彼は素晴らしい音楽性の持ち主です。
どうぞ、彼の演奏をお楽しみ下さい。 」

うわ〜! J.P.君、チラシの写真と全く同じ顔をしています。
ミュージシャンの写真って、あんまり良く写っていないものが多くないですか?
大抵、写真より実物の方が良いのよね。

でもJ.P.君は全く同じ!!
コンサートの後、ランチに行きました。
ニヘドンの隣のテーブルの乙女2人もオルガン1ドルコンサートの帰りで、
J.P.君の事を 「 ハリー・ポッター 」呼ばわりしていました。( 笑 )
マッシュルームカットっぽい髪型が可愛いかも!
J.P.君は黒いスーツをピシッと着こなしています。
あのスーツの着こなしから推し量るに、きっと彼はかなりの神経質さんと見た!
きっと彼は日本の腰パン・スタイルの男の子達の気持ちが絶対に分からないでしょうね。

さて、1曲目はヴァーグナーの「 トリスタンとイゾルデ 」から前奏曲です。
おおおおおおおおお!!! 最初の1音からゾクゾクゾクゾク・・・・・・・・!
両足の脛を、ゾワゾワしたものが這い上がって来ました。
ピアノなら、ピアニストのタッチによって個性が出易いけれども、
オルガンでオルガ二ストの個性って、ピアノ程には出にくいじゃないですか?
いや、ただ単に二へドンが今までオルガンを聞いた経験が乏しいからだけなのかな?
でもでも、ジャン=フィリップ・メルカールト君は本物ですよ!!
二へドンもほとんど毎回 オルガン1ドルコンサートには足を運んでいますが、
二へドンを唸らせたオルガ二ストは、そんなにいないのですよ。
オルガン1ドルコンサートでは、年に1回位、海外から演奏家を招んで来るのですが、
大体毎年、二へドンを唸らせる演奏には出会えなかったのね。
だから二へドンが思っていた事は 「 オルガン演奏は日本人が上手い! 」 だったのです。
でも、ジャン=フィリップ・メルカールト君は、( フルネームは長いので、J.P君と略します。)
その二へドンの思い込みを覆しました。
二へドンが今まで聞いたオルガ二ストの中で№1はJ.P.君ですよ!!!

これから銀行にでも就職の面接に行くの? みたいなスーツ姿の若者がパイプオルガンを弾く事に
よって、ただの青年ではなく、より巨大な「 なにものか 」の存在に見えるから不思議です。
ただ音によってのみ、深い精神性を表現する・・・・・・・・・ これは一体何なんだ?
目に見えない精神性が、今、確かに彼の背後から立ち上って来るようです。
こんなに気高く繊細な音色をルーシーから引き出したオルガニストは、恐らく彼が初めて!?
驚愕!!

「 トリスタンとイゾルデ 」 前奏曲の演奏が終わると、J.P.君は立って、客席に向かってお辞儀をしました。
そして素晴らしい事に日本語で口上を述べ始めました。
「 ミナサン コニーチワー。
  キョウワ コンサートニ ヨコソ オーコシクーダサイマシタ。
  キョウノ コンサートノ テーマワ シーガーチュー( 4月 )デス。
  タブン ワーグナート シーガーチューノ カンケイガ ワカラナイカモシレマセン。
  オンガクワ ヨリ ジユウニ ナリマシタ。
  コレワ オーケストラノ キョクデ オイロッパ( ヨーロッパ )デワ 
  シーガーチュート イエバ イースターデス。
  コハン( 後半 )ニワ アラン ト デュプレ コノフタリノ オンガクワ ワタシノ ダイスキナ オンガクデス。
  ドジョ タノシンデ クダサイ。 」

メモをみながら淡々と低い声で読む J.P.君に、二へドンは大感激!!
全く日本語が分からない人が、これだけ長い文章を人前で読み上げるのは、
大変な練習が要ったと思うのです。 素晴らしい!
例えば二へドンが突然アラビア語のメッセージを読まなければならないとして、一体どれだけ、
それがアラビア語だと理解してもらえるのでしょうか?
大昔に二へドンがエジプトに行った時に、エジプト・エアの機内で、アラブ人のスチュワーデスに
「 オレンジ・ジュース下さい。」 と「 今日から話せるアラビア語 」の本に出ていたカタカナを言ったら、
まるで分かってくれなくて撃沈したもの。 
J.P.君の日本語は所々発音が怪しかったものの、何を言っているのか日本人に通じたって言う所が凄い!!
尊敬!! 二へドン、語学に堪能な人大好きだし!!

2曲目は、J.S.バッハ / キリストは死の絆につかせたまえり BWV 718  です。
冒頭の左手だけの単純な旋律で、二へドンはもう頭クラクラ。
ねえ、二へドンは毎月毎月、ここのみなとみらいホールでルーシーの音を聞いているんにゃよ。
どうして、 J.P.君は他のオルガニストと音が違って、そんなに美麗なの?
右手の高音部のメロディが入ります。
あー、この人は右手の音と左手の音の絡み合いが絶妙だぁ~!!
例えばさ、粉末のシチューの素を鍋に入れて、かき混ぜ方や煮込み方が足らないと、
舌の上に乗せた時に「 何か混ざってない 」感じを感じてしまう事って有りません?
バターとミルクと野菜の旨み全てがしっかりと融合した、そんな音の緊密感が有る演奏でした。

曲が終わると、また J.P.君は立って、客席に向かってお辞儀をしました。

3曲目はジャン・アラン / 幻想曲 第2番 です。
中盤、「 幻想曲 」と言うよりは狂詩曲っぽい変化を見せて、
あのぼそぼそと喋る大人しい J.P.君が狂熱的に鍵盤を叩く様子に、二へドンはポカ~ン。
J.P.君は、そんな攻撃ではまだまだ足りないぞとでも言わんばかりに
足鍵盤と両手の和音でドカーン! ドカーン!!
・・・・・・・・・・・び・・・・・・・・び・・・・・・・・・・びっくり。
その後、静かな朝靄が漂う様なメロディの中にエキゾチックな味が混入し、
何とも面白い曲です。

4曲目はJ.S.バッハ / 栄光の日は来たりぬ BWV 629  です。
おお! これは又、随分と明るい雰囲気のバッハです。
彼は1つの音をねちっこく伸ばさないタイプの演奏が好きみたいですね。

5曲目はJ.S.バッハ / 今日神の子は勝利をおさめ BWV 630。
宝石箱を開けたら色とりどりの宝石の石が光り輝きながら飛び出して来る様な
ゴージャス感のある演奏です。
彼の演奏を聴いちゃうと他のオルガニストのバッハは詰まらないよ。
バッハを爺むさく弾く人が多いよね。

6曲目は、マルセル・デュプレの「 2つの素描 」です。
タイトルに「 2つ 」と有る様に、2つの曲から構成されています。
先ずは「 ホ短調 」。
むむむむ・・・・・・。 こりゃ又、現代曲っぽい。
J.P.君は、こういう曲を弾いちゃうんですね。
彼の鍵盤を押す両手を見ていて二へドンはこう思いました。
「 彼のタッチは、ヴァイオリンの弓をコントロールするのと同じ事をしているんだな。」
普通の奏者は、生まれながらにして持っている「 人間の手 」で演奏している感じがするのですが、
J.P.君は、「 習慣 」とか「 無意識に 」という 「 当たり前 」の感覚で手を動かしてはいないのです。
腹腔鏡を操作する腕の良い外科医みたいに凄くかっちりと、両手をコントロールする演奏ねんです。
言うなれば彼は「 オルガン界のブラック・ジャック 」!!
かっちょええ~!!

そして「 変ロ短調 」です。
キャー!! ロックで格好いい~!!
クラシック音楽の中には時々ロック魂の入った曲にお目に掛かれるのですが、
へヴィメタですよ、これはっ!!
二へドンがJ.P.君の「 変ロ短調 」を聴きながら頭に思い浮かんだのが「 アイアン・メイデン 」。(笑)
しかしJ.P.君は几帳面な性格なんでしょうね。
彼の演奏は、繊細な曲でも、大迫力の強い音を出す時でも、絶対に雑にはならないのです。
このへヴィメタ調の曲でも、音のボリュームは大きいけれども、乱れが全く無いのです。

よく、車のハンドルを握ると、人が変わった様になる人がいるけれども、
J.P.君の今の演奏もそんな感じ。
あんなに大人しそうに見えて、何、へヴィメタ・オルガンを弾いちゃってるの?
愉快! 愉快! 二へドンはこういうの大好きなんですから!!
足鍵盤を乱れ踏む箇所も2箇所有り、視覚的に見せる(魅せる)パフォーマンスも有りました。
演奏が終わると、J.P.君は手すりに両手を乗せて客席に向かってお辞儀をしました。
ぱちぱちぱちぱち。

J.P.君が喋ります。
「 アリガトウ ゴザイマス。 アンコールニ 150ネン ホドマエニ サッキョクサレタ キョクヲ
  スルカト イウト、ヨコハマカイコウノ トシニツクラレタ ベルギーノ キョクデス。
  ドウゾ オキキ クダサイ。」

そしてアンコールに演奏してくれたのが、セザール・フランクの「 アンダンティーノ ト短調 」です。
うふふふ。 さっきまで、へヴィメタ調のマルセル・デュプレを聴かせてくれたJ.P.君が、
アンコールでは、こんなメルヘンチックな曲も、
ちゃんとクラシック音楽の香り高く弾いちゃうのね。

ジャン・フィリップ・メルカールトという実力派オルガニストを知る事が出来て、良かった!
「 オルガン1ドルコンサート 」 最高~!!
 
***** 「 第131回 オルガン・1ドル コンサート 」 ・ 完 **********


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[ お知らせ ]

2009年03月20日にアップした記事 「 トリオ・ミラージュ 」の記事が完成しました。
http://nihedon.hama1.jp/e92097.html


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Posted by ニヘドン at 18:29│Comments(2)コンサート
この記事へのコメント
みなとみらいホールの、1ドルコンサートは数回行きました。最近はご無沙汰していますが、あのパイプオルガンの音色は素晴らしいですね。私が行く横浜の教会はオルガンとピアノで、賛美歌を奏でています。でもなぜかオルガンの音色は重みを感じます。同じ派の東京ソフィア教会にはパイプオルガンがあり、年に数回足を運び重厚なパイプオルガンの音色を堪能してきます。その内みなとみらいホールの1ドルコンサートにも行くつもりです。
Posted by なっちゃんなっちゃん at 2009年04月22日 20:42
>  なっちゃんさん。

   こんにちは! コメントありがとうございます!
   なっちゃんさんも、オルガンの音色に親しんでいらっしゃるのですね。
   みなとみらいホールのオルガン “ ルーシー ”は
   特に音色がチャーミングで、演奏家によって様々な
   魅力が引き出されます。

   オルガン1ドルコンサートは原則 毎月第4水曜日ですので、
   スケジュール帳に書いておいて下さいね!!

   ベビーカーを押して来るママ軍団の数も毎回増えて来ている
   気がします。
Posted by ニヘドン at 2009年04月23日 09:30
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